41 / 486
1~10話
10d、私は応援のタイミングをわかっていない
しおりを挟む
ガル達の模擬試合が終わると、本日の公開訓練は以上をもって終了です、との案内がなされた。
見物客達がバラバラと席を立ち、騎士達は誘導と後片付けに取りかかる。
所在なくベンチで足をぶらつかせる私を残し、観客席はあっという間に空になった。
どうしたものか。
ガルは若い騎士に質問を受けていて、手が離せないようだし。
一人ぼーっとしていると、茶髪の騎士がこちらに駆け寄ってきた。
「君、ガリュースの家に居た子だろ? また会ったな」
レモンを落とした紅茶のような明るい茶色の髪を揺らし、少し垂れ目がちなマスタード色の瞳を細めて甘く微笑む。これでは確かにモテるだろう。
ガルにとっていた態度とは大分違う。
だがしかし、私の事を「ちんまいの」呼ばわりした事だって忘れてはいない。
「えーと……フェンベック、様?」
知らない人に話しかけられてもついていくなと言われたけれど、この人はガルの同僚だし話すくらいはセーフだろうか?
「俺の名前知っててくれたのか! 改めて、俺はウィルド=フェンベック。この第二部隊で副隊長をしている。君の名前を聞いても?」
こちらの世界に来てから、こうやって私に対して自己紹介してくれた人は初めてだ。意外といい人かもしれない。
礼儀をもって、こちらも名前を告げる。
「紺野真矢と言います」
「コンノマヤ?」
「真矢が名前です」
「ああ、そう言えばあの日もマヤって呼ばれて―――」
「何をしている!」
穏やかな会話に、鋭い声が飛んだ。
見物客達がバラバラと席を立ち、騎士達は誘導と後片付けに取りかかる。
所在なくベンチで足をぶらつかせる私を残し、観客席はあっという間に空になった。
どうしたものか。
ガルは若い騎士に質問を受けていて、手が離せないようだし。
一人ぼーっとしていると、茶髪の騎士がこちらに駆け寄ってきた。
「君、ガリュースの家に居た子だろ? また会ったな」
レモンを落とした紅茶のような明るい茶色の髪を揺らし、少し垂れ目がちなマスタード色の瞳を細めて甘く微笑む。これでは確かにモテるだろう。
ガルにとっていた態度とは大分違う。
だがしかし、私の事を「ちんまいの」呼ばわりした事だって忘れてはいない。
「えーと……フェンベック、様?」
知らない人に話しかけられてもついていくなと言われたけれど、この人はガルの同僚だし話すくらいはセーフだろうか?
「俺の名前知っててくれたのか! 改めて、俺はウィルド=フェンベック。この第二部隊で副隊長をしている。君の名前を聞いても?」
こちらの世界に来てから、こうやって私に対して自己紹介してくれた人は初めてだ。意外といい人かもしれない。
礼儀をもって、こちらも名前を告げる。
「紺野真矢と言います」
「コンノマヤ?」
「真矢が名前です」
「ああ、そう言えばあの日もマヤって呼ばれて―――」
「何をしている!」
穏やかな会話に、鋭い声が飛んだ。
2
お気に入りに追加
3,296
あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!
藤原ライラ
恋愛
ルイーゼ=アーベントロートはとある国の末の王女。複雑な呪いにかかっており、訳あって離宮で暮らしている。
ある日、彼女は不思議な夢を見る。それは、とても美しい男が女を抱いている夢だった。その夜、夢で見た通りの男はルイーゼの目の前に現れ、自分は魔術師のハーディだと名乗る。咄嗟に呪いを解いてと頼むルイーゼだったが、魔術師はタダでは願いを叶えてはくれない。当然のようにハーディは対価を要求してくるのだった。
解呪の過程でハーディに恋心を抱くルイーゼだったが、呪いが解けてしまえばもう彼に会うことはできないかもしれないと思い悩み……。
「君は、おれに、一体何をくれる?」
呪いを解く代わりにハーディが求める対価とは?
強情な王女とちょっと性悪な魔術師のお話。
※ほぼ同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる