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1~10話
8d、私はタオルの重要性をわかっていない
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「……ふぅ」
ガルの背中についた泡を湯で流し、ペタリと浴室の床に座り込む。
広い背中を力いっぱい洗い上げて、一仕事終えた気分だ。
「ありがとう、サッパリした」
ガルは私からタオルを受け取ると、手早く前面や手足を洗って湯を浴びる。
腕の動きに合わせて形を変える背筋をボーッと眺めていると、身体を洗い終えたガルが立ち上がってこちらを振り向いた。
「!」
「さあ湯につかろう。……ああ、こんなに冷えてしまって」
抱き上げられ、静かに湯につけられる。
ガルは私のお腹に手を回して後ろから抱きしめしっかり肩まで湯につからせると、濡れた私の髪に鼻を埋めた。
「今度、マヤ用にも石鹸を買うか。いや、だがしかし同じ香りがしているのも捨て難い……」
頭上でガルが何事か話しているけれど、私は反応できない。
視覚からの衝撃に機能停止した頭の中では、以前テレビで見た『生物の歩み~氷河期の生き物たち~』が延々と再生されていた。
風呂を出て着替えた後は、一緒のベッドにもぐり込む。
逐一抵抗し続ける事を諦めた私は、風呂上がりの着替えもベッドで抱きしめられるのも、すべてされるがままだ。
ガルに買われてここに来てから、一度も性的な手出しをされた事はない。
抱き上げる時だって、眠る時だって、一緒に風呂に入る時でさえ。
乙女心的には微妙に複雑なものもあるけれど、私にとってガルの腕の中は『安心できる場所』になりつつあった。
難点といえば腕まくらが高すぎる事くらいだろうか。そして硬い。
収まりのいい場所を探してモゾモゾと動かしていた頭を落ち着ける。
「明日のお出かけ、楽しみです」
「俺もだ。まさか公開訓練を楽しみに思う日が来るとはな」
「嫌いだったんですか?」
「まあな、見世物にされるのは好きじゃない」
いつも表情は険しいが元々整った顔の作りをしているガルのことだ、大勢の女性にキャーキャー言われて大変なのかもしれない。
ガルの声が緩やかな振動となって触れ合った部分から伝わる。
穏やかな低音が眠気を誘って、私は少し高すぎる枕の上で夢も見ずに眠った。
ガルの背中についた泡を湯で流し、ペタリと浴室の床に座り込む。
広い背中を力いっぱい洗い上げて、一仕事終えた気分だ。
「ありがとう、サッパリした」
ガルは私からタオルを受け取ると、手早く前面や手足を洗って湯を浴びる。
腕の動きに合わせて形を変える背筋をボーッと眺めていると、身体を洗い終えたガルが立ち上がってこちらを振り向いた。
「!」
「さあ湯につかろう。……ああ、こんなに冷えてしまって」
抱き上げられ、静かに湯につけられる。
ガルは私のお腹に手を回して後ろから抱きしめしっかり肩まで湯につからせると、濡れた私の髪に鼻を埋めた。
「今度、マヤ用にも石鹸を買うか。いや、だがしかし同じ香りがしているのも捨て難い……」
頭上でガルが何事か話しているけれど、私は反応できない。
視覚からの衝撃に機能停止した頭の中では、以前テレビで見た『生物の歩み~氷河期の生き物たち~』が延々と再生されていた。
風呂を出て着替えた後は、一緒のベッドにもぐり込む。
逐一抵抗し続ける事を諦めた私は、風呂上がりの着替えもベッドで抱きしめられるのも、すべてされるがままだ。
ガルに買われてここに来てから、一度も性的な手出しをされた事はない。
抱き上げる時だって、眠る時だって、一緒に風呂に入る時でさえ。
乙女心的には微妙に複雑なものもあるけれど、私にとってガルの腕の中は『安心できる場所』になりつつあった。
難点といえば腕まくらが高すぎる事くらいだろうか。そして硬い。
収まりのいい場所を探してモゾモゾと動かしていた頭を落ち着ける。
「明日のお出かけ、楽しみです」
「俺もだ。まさか公開訓練を楽しみに思う日が来るとはな」
「嫌いだったんですか?」
「まあな、見世物にされるのは好きじゃない」
いつも表情は険しいが元々整った顔の作りをしているガルのことだ、大勢の女性にキャーキャー言われて大変なのかもしれない。
ガルの声が緩やかな振動となって触れ合った部分から伝わる。
穏やかな低音が眠気を誘って、私は少し高すぎる枕の上で夢も見ずに眠った。
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