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1~10話
4d、私は扱われ方をわかっていない
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「こんな小さな身体に酷いことをする。上がったら薬を塗ろう」
ガルはガラス細工にでも触れるかのように泡のついた手でそうっと背中を撫でると、そのまま髪もワシャワシャと洗ってお湯で流した。
自身の身体も幾分雑な手つきで洗った後は、私を抱えたまま湯船に入る。
ガルの逞しい身体を背もたれに背後から抱きしめられながら、私はグッタリと疲れきって手足を投げ出していた。
身体を洗うため腰のタオルを外そうとするガルと、それだけは死守したい私とで決死の攻防を繰り広げたのだ。
タオルの合わせ目を渾身の力で押さえながら、いつ首輪が作用するのではとの緊張感も相まって、ものすごーく疲れた。
結局首輪が熱くなることはなく、頑張った甲斐あって今もタオルは着けられたままだ。
「風呂は良いものだろう」
未だに私が湯を怖がっていたと思っているらしいガルは、湯船で身体の緊張を解いた私の様子を見て機嫌良さそうに言った。
お腹の前で組まれた無骨な手が不埒な動きをする気配はない。
十数日ぶりの、こちらへ転移してからは初めてのお風呂だ。
気持ちいい……。
温かなお湯に浸かって身体の力を抜くと、ここまでの疲労や睡眠不足が一気に押し寄せてうとうとと船を漕いでしまう。
「眠かったら寝ててもいいぞ。運んでやる」
背中に触れる肌は温かいし耳をくすぐる優しい低音がなんだか子守唄のようで。
何をされるか分からない状況で眠るなんて危険だと叱咤してくる理性が、分厚い膜に覆われて行くように徐々に遠ざかって行った。
————————————————
あとがき
【設定補足】
首輪は強い反抗心を伴う言動や自身を害する行動に反応しますが、無意識にとった言動なんかには働きません。
なのでウッカリ刃物で怪我をすることもあれば、自分が反抗的だと思っていない奴隷の失礼な態度なんかは見逃されます。(その意識を事前に折っておくのが奴隷商人)
ガルはガラス細工にでも触れるかのように泡のついた手でそうっと背中を撫でると、そのまま髪もワシャワシャと洗ってお湯で流した。
自身の身体も幾分雑な手つきで洗った後は、私を抱えたまま湯船に入る。
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身体を洗うため腰のタオルを外そうとするガルと、それだけは死守したい私とで決死の攻防を繰り広げたのだ。
タオルの合わせ目を渾身の力で押さえながら、いつ首輪が作用するのではとの緊張感も相まって、ものすごーく疲れた。
結局首輪が熱くなることはなく、頑張った甲斐あって今もタオルは着けられたままだ。
「風呂は良いものだろう」
未だに私が湯を怖がっていたと思っているらしいガルは、湯船で身体の緊張を解いた私の様子を見て機嫌良さそうに言った。
お腹の前で組まれた無骨な手が不埒な動きをする気配はない。
十数日ぶりの、こちらへ転移してからは初めてのお風呂だ。
気持ちいい……。
温かなお湯に浸かって身体の力を抜くと、ここまでの疲労や睡眠不足が一気に押し寄せてうとうとと船を漕いでしまう。
「眠かったら寝ててもいいぞ。運んでやる」
背中に触れる肌は温かいし耳をくすぐる優しい低音がなんだか子守唄のようで。
何をされるか分からない状況で眠るなんて危険だと叱咤してくる理性が、分厚い膜に覆われて行くように徐々に遠ざかって行った。
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あとがき
【設定補足】
首輪は強い反抗心を伴う言動や自身を害する行動に反応しますが、無意識にとった言動なんかには働きません。
なのでウッカリ刃物で怪我をすることもあれば、自分が反抗的だと思っていない奴隷の失礼な態度なんかは見逃されます。(その意識を事前に折っておくのが奴隷商人)
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