ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

１１～２０話

１７c、私は視線の行方をわかっていない

いつも通り一緒に風呂に入る。
風呂椅子に座るガルの膝の上に乗せられているのも、いつも通り。

でもなぜだろう。ガルと目が合わない。

入浴時に余計な場所を見ないよう努めた結果ガルの目を見ることにした私は、じっとガルの横顔を見つめていた。
俯いていると下半身が目に入ってしまうし、目をつぶっていると感覚が研ぎ澄まされてしまってどうにも上手くないのだ。

けれど最初のうちは優しい眼差しを返してくれていたガルが、最近では段々と目が合う回数が減って、今日に至っては最早(もはや)浴室の壁を見つめっぱなしである。

何か気になる物でもあるのかとガルの視線の先を追ってみても、やっぱりただツルリと白い壁があるだけだ。

「ガル様……？」

「ん？　どうした」

それはこちらの台詞だ。
しかも話す時まで壁を向いたままなものだから、これでは浴室の壁に話しかけているようだ。

「私、何かしましたか？」

つい先ほどまでは一緒に食事をとりながら、ちゃんと目を見て会話していたはずなのに。

「マヤは何をしていても可愛いからな」

ダメだ。会話まで成立しなくなっている。

それでも声音は穏やかで、怒ったりしているわけではないのだとわかる。
石鹸を泡立てた大きな手の平も優しく私の身体を撫でていく。
こちらを見ていないせいで手探りで身体を撫でる手が、そろそろと動いてくすぐったい。

いっそのことこちらを見ていない今がチャンスと、私はガルの鍛え上げられた肉体を堂々と盗み見ることにした。

触れた部分から伝わる凹凸とチラチラ視界に入る肌から逞しい事は知っていたけれど、やっぱりこうやってしっかり見るとかなりの迫力を感じる。