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51~最終話
【最終話】この世界で手に入れたもの【中②】
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ぱちりと、マリエラの目が開いた。
視界にクロを捉えた途端即座に攻撃態勢に入ろうとして、腕を拘束する縄に阻まれる。
「――っ!」
素早く周囲を見渡し自身の置かれた状況を悟ったマリエラは、心配そうに見つめる両親には目もくれず、視線で射殺してやるとばかりに鋭くクロを睨みつけた。
「私からすべてを奪っておいて、貴方だけが何もかも手に入れようなんて許さないわっ! 異常な魔力量で側に置ける相手もなく、孤独なまま廃太子されて地位も存在意義も失うはずだったでしょう!? そんな貴方を憐れに思えばこそ、あの日の屈辱を赦してあげることもできたのに!!」
クロに向けられる鋭利な言葉。
私からすれば何もかもを持っているような女性が、すべてを失ったと叫ぶ。
美しく、理知的で、高い魔力を有し。きらびやかな衣装に、丁寧に手入れされた肌と髪。住む家があり、生まれてきた世界にいて、こんな状況であっても心配してくれる両親がいる。
……これ以上一体何を得られれば、彼女は満たされるというのだろう。
「マリエラ、ダンスの一件については申し訳なく思っている。王家としても当時、できる限りの償いをしたつもりだ」
「そんなもの……っ! 私は王妃になってこの国のすべてを手に入れるはずだったのよ!? 何をされたって足りるわけないじゃない!」
クロはダンス中の体調悪化に気付かなかった自分を責めているようだけれど、それすらもマリエラの逆恨みだと思う。
気分が優れないと伝えれば、クロならダンスを中断してでもすぐに休ませてくれたはずだ。
今だって大事な戴冠式の途中だというのに、こうして駆けつけて私の身を案じてくれている。
助けてくれる人はすぐ目の前にいたのに。
伝えることもせず、大丈夫だと過信してダンスを続行したのは他ならぬマリエラ自身ではないか。
「――国は王の所有物ではない。国王とは民を支え、国を守る者。すべては国のためにあり、個人として手にできるのは伴侶くらいのものだ。なればこそ、伴侶には愛しあい、互いの支えとなれる者を望む」
「私だって…………っ」
マリエラは込みあげる情動を吐き出そうとはくはくと口を開け閉めして、しかしそれ以上続く言葉もなく唇を噛みしめた。
視界にクロを捉えた途端即座に攻撃態勢に入ろうとして、腕を拘束する縄に阻まれる。
「――っ!」
素早く周囲を見渡し自身の置かれた状況を悟ったマリエラは、心配そうに見つめる両親には目もくれず、視線で射殺してやるとばかりに鋭くクロを睨みつけた。
「私からすべてを奪っておいて、貴方だけが何もかも手に入れようなんて許さないわっ! 異常な魔力量で側に置ける相手もなく、孤独なまま廃太子されて地位も存在意義も失うはずだったでしょう!? そんな貴方を憐れに思えばこそ、あの日の屈辱を赦してあげることもできたのに!!」
クロに向けられる鋭利な言葉。
私からすれば何もかもを持っているような女性が、すべてを失ったと叫ぶ。
美しく、理知的で、高い魔力を有し。きらびやかな衣装に、丁寧に手入れされた肌と髪。住む家があり、生まれてきた世界にいて、こんな状況であっても心配してくれる両親がいる。
……これ以上一体何を得られれば、彼女は満たされるというのだろう。
「マリエラ、ダンスの一件については申し訳なく思っている。王家としても当時、できる限りの償いをしたつもりだ」
「そんなもの……っ! 私は王妃になってこの国のすべてを手に入れるはずだったのよ!? 何をされたって足りるわけないじゃない!」
クロはダンス中の体調悪化に気付かなかった自分を責めているようだけれど、それすらもマリエラの逆恨みだと思う。
気分が優れないと伝えれば、クロならダンスを中断してでもすぐに休ませてくれたはずだ。
今だって大事な戴冠式の途中だというのに、こうして駆けつけて私の身を案じてくれている。
助けてくれる人はすぐ目の前にいたのに。
伝えることもせず、大丈夫だと過信してダンスを続行したのは他ならぬマリエラ自身ではないか。
「――国は王の所有物ではない。国王とは民を支え、国を守る者。すべては国のためにあり、個人として手にできるのは伴侶くらいのものだ。なればこそ、伴侶には愛しあい、互いの支えとなれる者を望む」
「私だって…………っ」
マリエラは込みあげる情動を吐き出そうとはくはくと口を開け閉めして、しかしそれ以上続く言葉もなく唇を噛みしめた。
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