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31~40話

告白は墓穴のあとに【中】

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 そうして話した。
 ここではない、別の世界から来たこと。
 落ちたペンダントトップを拾おうとして、気付けばこの世界にいたこと。
 なぜか自分だけが小さくなっていたこと。

 最初のうちは夢だと思っていたこと。
 それにより、妖精ではないと伝えそびれてしまったこと。
 この世界のことは何一つわからないこと。
 元の世界に魔法はないこと。

 父親は知らず、幼い自分を捨てた母親はもう顔すら思い出せないこと。
 それを悲しいとも思わないこと。
 唯一の家族だった大好きなおじいちゃんは、一年と少し前に亡くなったこと。
 遺骨入りカプセルは肌身離さず身につけていたこと。

 劣悪な労働環境に耐えきれず、飛び出すように会社を辞めたこと。
 友人ともすっかり疎遠になってしまったこと。
 走るのが得意なこと。

 飛ばされてくる直前、世界から孤立したような空虚感を抱いていたこと。

「なので……元の世界から、『いらない』って弾き出されちゃったのかなって」

 おじいちゃんのことを思い出して潤んだ瞳で、ハハハと渇いた笑いをもらす。

 クロは私の話を聞いてどう思っただろうか。
 母に捨てられ、仕事から逃げ出し、友人もなく、世界から不要物とされるような――無価値な私のことを。



「…………指輪に、導かれたんじゃないだろうか」

「え?」

「『宵明く光』――導きの指輪には、わかっていないことも多い。わかっているのは、今はなき古代の技術で作られ、それを継承した者を運命の相手に導くらしい、ということくらいだ。代々受け継がれるうちに細かな情報は失われてしまったのだろう。まさか、界を繋ぐほどの力があるとは思いもしなかったが」

「あの指輪が……?」

 私が触れたことで、色の変わった指輪。
 ウサギのぬいぐるみの、下敷きになっていた指輪。

「たしかに……あの指輪を見つけたのは、私がこの世界で一番最初にいた場所でした」

「ならば、指輪の力と考えてまず間違いないだろう。俺の『運命』だったばかりに、ヒナから慣れ親しんだ故郷を奪ってしまったのか……。本当にすまない。なんと言って詫びたらいいか――」

「それはもういいんです! 幸いも一緒だし、元の世界に帰るよりもここで、ずっとクロの側にいたいと思えたから! …………でも、そっか。それなら私、いらなくて追い出されたわけじゃなかったんだ……」

 後半は独り言のように呟いて、目尻を指で拭う。
 異世界に飛ばされたのだと気付いてからずっと胸の奥にしまい込んでいた苦い思いが、音もなく消えていく。

 いらなかったからじゃない、必要とされてここに来たんだ。
 何も持たない私を、世界を越えて必要としてくれる人がいた。それだけで、この世界に居場所を与えられたかのような安心感と喜びに満たされる。
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