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21~30話

王子様みたいな王子様【中】

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 私を魔法で大きくすることは、『できるけどできない』ということか。
 長期化すれば死ぬ危険があるというのは恐ろしいけれど、いつか短時間だけでも普通の人間サイズに戻ってみたいものだ。
 きっと今目にしている何もかもが違って見えて、クロとだってちゃんと目線を合わせて話が――

「なにより、侵入者対策として城内では姿を変えるたぐいの魔法は使えないようになっている」

「あー……」

 残念。ここにいる限り、大きくなる魔法を試すことはできなそうだ。

 クロと最初に対面したとき、私を侵入者だと疑わなかったのもそのおかげだろう。『人間』が小さくなって、こっそりと侵入することは不可能だから。

「いっそ、俺が小さくなれればよかったんだがな……」

「……?」

 ポツリと洩らされた言葉に首を捻る。

 クロが小さく……?

 ――ああ! クロもお菓子の城に入ってみたかったのか!
 私だけ満喫してしまって申し訳ない。少しでも気分を味わえるよう、また明日たっぷりと中身をお裾分けしよう。

 お菓子の城の美味しいあれこれを思い浮かべながら、布団代わりにクロの寝衣の襟ぐりを引き寄せて幸せな眠りについた。






 クロの安静期間も終わり、元通り休憩室のドールハウスへと戻って数日。

 一日中クロと過ごしていた日々の終わりに一抹の寂しさを感じながら、今日は『おじいちゃん遺骨入りカプセル』を抱えてお菓子の城を案内していた。

「――で、あそこにあった彫刻はもう食べちゃったんだけどね。ほら、こっちにはシャンデリアまであるの! すごいでしょ? お菓子の家の話をしたら、クロが用意してくれたんだよ!」

 お菓子の城はワゴンごと休憩室に運び込まれ、今はドールハウスの乗った棚の手前に置かれている。

「ベタベタになっちゃうから、おじいちゃんをここには置いてあげられないけど……いくつかお供えするからね!」

 さすがに和菓子はないけれど、おじいちゃんが好きだったプレーンのクッキーを中心に、めぼしい小物を数点掴んでドールハウスの寝室へと引き返した。
 ちょっと頭痛の気配もあるので、ついでに横になって休んでおくとしよう。
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