上 下
41 / 165
11~20話

助けて、助けられて【下】

しおりを挟む
 家に住まわせてもらって、食べ物を貰って、水を貰って、服まで貰って……。
 何から何までクロに甘えっぱなしだ。

「あのー、何か私にできる仕事ってありませんか?」

「金がいるのか? 欲しいものがあるなら言ってくれれば――」

「いえ、そうじゃなくって! 貰ってばかりなので、私からも何かお返ししたいんです。この身体肉体労働くらいしか差し出せるものがないんですけど――」

「ッゲホ、ゴホッゴホッ!」

「大丈夫ですか?」

 風邪だろうか? ついさっきまでは元気そうだったのに。

「ああ、いや、ゲホッ……気にするな。プレゼントは俺が贈りたくて勝手にやっているだけだ。ヒナはただ、笑って受け取ってくれればいい。それで借りを感じたり、何かを返そうとする必要はない」

 クロが勝手に贈ってきたものだから、貰うだけ貰って、はいおしまい……?

「そんなの、クロの厚意を利用してるだけじゃないですか」

「俺も楽しんでいるから問題ない」

「〰〰問題ありますっ! 人はみんな助け合って生きてるんです! お店で買う食材も、住んでいる家だって、誰かの助けがあって自分の元に届く。一人じゃ生きていけないからこそ、自分が助けてもらったら自分も誰かを助けるんです。私はクロにいーっぱい助けてもらいました! すごくすごく嬉しかった! だから私も、クロの助けになりたいんです!!!」

 ひと息に言い切って、はっと我に返る。
 たくさんの厚意を受け取っている分際で、偉そうなことを言ってしまった――!
 でも、クロが……まるで『自分を好きに利用していい』とでも言っているみたいだったから……。

「俺の助けに?」

「う、はい……。この大きさじゃできることは限られちゃうと思うんですけど、一応体力はあるので、細かい雑用とか、その……」

「ヒナ」

 足元に手のひらを差し出される。
 きつく眉根を寄せるクロを気にしながらも、うながされるまま手のひらに乗れば、ゆっくりと持ち上がった手のひらはクロの顔の高さで止まった。

「……ヒナはすごいな」

 擦り寄せるように近づけられた額を、おずおずと撫でてみる。

「そんなことを言ってもらったのは初めてだ」

「そうなんですか?」

「ああ。利用できるものは利用して、利用価値を失ったものは淘汰とうたされる。そんな環境で育ってきた。――『助け合い』とはまるきり逆だな」

 それでもクロは、他者を利用することばかり考えるような人ではないと思うけれど……。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人

花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。 そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。 森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。 孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。 初投稿です。よろしくお願いします。

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...