23 / 165
1~10話
おさわりには制限時間を設けましょう【上】
しおりを挟む
「……ヒナ。そうして魔力を吸収してくれるのはありがたいが、あまり無茶はしないでくれ」
「吸収?」
クロの言葉に首を傾げる。
「ああ。先ほどからずっと俺の魔力を吸い取ってくれているだろう? 魔力抑制による痛苦が解消されて、俺は楽になるが――――もしや無意識か?」
ハテナを浮かべながら呆けていると、クロにも伝わっていないことが伝わったらしい。
「えーと……はい、たぶん」
今現在何もしている意識はないので、何かしているというなら無意識なのだろう。
「体内になんらかの違和を感じるはずだ。――今もほら。手のひらに触れた部分から、熱を散らす大気のように、閉ざされた部屋の戸を開け放つように、ずっと魔力を吸収し続けてくれている」
「うーん……?」
心配そうに近づけられた指先に、手を伸ばしてペタリと触れてみる。
触れた手のひらからもドクドクと、いつも通り心地よい『ぬるま湯』の流れ込む感覚。
「あっ、これが魔力?」
「ああ、おそらく。いくら魔力干渉を受けない存在だといっても、他者の魔力を取り込むのは相当な負荷だろう。制御できるのなら吸収を絶ったほうがいい」
「え? でも私が『吸収』をやめたら、クロはまた苦しくなっちゃうんですよね?」
「俺はもう慣れている」
……それは嘘だと思う。
あんなに苦しげにうなされて、私が触れた途端ほっとしたように安らかな寝息を立てはじめるくせに。
侵入者で窃盗犯の怪しい妖精もどきなんて、もっと自分に都合よく利用してしまえばいいものを。
よくわからないけれど、痛苦を伴うという『魔力抑制』だって、周囲の人に魔力干渉とやらをしないためにやっているのではないだろうか。
あまりにも自己犠牲的すぎて心配になってきた。
「やめ方もわからないし……それに、大丈夫ですよ! 全然嫌な感じはしないです! むしろ、ぬるめの温泉みたいで気持ちいいくらい」
大きな指先に頬をすり寄せる。
……うん。温かくて穏やかで、不快感や身体に害を及ぼされそうな感覚なんて微塵もない。
「そんなにも親和性が高いのか?」
壊れ物にでも触れるかのようにそろそろと頬を撫でられて、くすぐったさに目を細める。
そんなに不安そうな顔をしなくても、私はなんともないから安心してほしい。
「……もう少し触れていてもいいだろうか?」
「ふふっ、いくらでもどうぞ」
「吸収?」
クロの言葉に首を傾げる。
「ああ。先ほどからずっと俺の魔力を吸い取ってくれているだろう? 魔力抑制による痛苦が解消されて、俺は楽になるが――――もしや無意識か?」
ハテナを浮かべながら呆けていると、クロにも伝わっていないことが伝わったらしい。
「えーと……はい、たぶん」
今現在何もしている意識はないので、何かしているというなら無意識なのだろう。
「体内になんらかの違和を感じるはずだ。――今もほら。手のひらに触れた部分から、熱を散らす大気のように、閉ざされた部屋の戸を開け放つように、ずっと魔力を吸収し続けてくれている」
「うーん……?」
心配そうに近づけられた指先に、手を伸ばしてペタリと触れてみる。
触れた手のひらからもドクドクと、いつも通り心地よい『ぬるま湯』の流れ込む感覚。
「あっ、これが魔力?」
「ああ、おそらく。いくら魔力干渉を受けない存在だといっても、他者の魔力を取り込むのは相当な負荷だろう。制御できるのなら吸収を絶ったほうがいい」
「え? でも私が『吸収』をやめたら、クロはまた苦しくなっちゃうんですよね?」
「俺はもう慣れている」
……それは嘘だと思う。
あんなに苦しげにうなされて、私が触れた途端ほっとしたように安らかな寝息を立てはじめるくせに。
侵入者で窃盗犯の怪しい妖精もどきなんて、もっと自分に都合よく利用してしまえばいいものを。
よくわからないけれど、痛苦を伴うという『魔力抑制』だって、周囲の人に魔力干渉とやらをしないためにやっているのではないだろうか。
あまりにも自己犠牲的すぎて心配になってきた。
「やめ方もわからないし……それに、大丈夫ですよ! 全然嫌な感じはしないです! むしろ、ぬるめの温泉みたいで気持ちいいくらい」
大きな指先に頬をすり寄せる。
……うん。温かくて穏やかで、不快感や身体に害を及ぼされそうな感覚なんて微塵もない。
「そんなにも親和性が高いのか?」
壊れ物にでも触れるかのようにそろそろと頬を撫でられて、くすぐったさに目を細める。
そんなに不安そうな顔をしなくても、私はなんともないから安心してほしい。
「……もう少し触れていてもいいだろうか?」
「ふふっ、いくらでもどうぞ」
53
お気に入りに追加
1,130
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
最狂公爵閣下のお気に入り
白乃いちじく
ファンタジー
「お姉さんなんだから、我慢しなさい」
そんな母親の一言で、楽しかった誕生会が一転、暗雲に包まれる。
今日15才になる伯爵令嬢のセレスティナには、一つ年下の妹がいる。妹のジーナはとてもかわいい。蜂蜜色の髪に愛らしい顔立ち。何より甘え上手で、両親だけでなく皆から可愛がられる。
どうして自分だけ? セレスティナの心からそんな鬱屈した思いが吹き出した。
どうしていつもいつも、自分だけが我慢しなさいって、そう言われるのか……。お姉さんなんだから……それはまるで呪いの言葉のよう。私と妹のどこが違うの? 年なんか一つしか違わない。私だってジーナと同じお父様とお母様の子供なのに……。叱られるのはいつも自分だけ。お決まりの言葉は「お姉さんなんだから……」
お姉さんなんて、なりたくてなったわけじゃない!
そんな叫びに応えてくれたのは、銀髪の紳士、オルモード公爵様だった。
***登場人物初期設定年齢変更のお知らせ***
セレスティナ 12才(変更前)→15才(変更後) シャーロット 13才(変更前)→16才(変更後)
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人
花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。
そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。
森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。
孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。
初投稿です。よろしくお願いします。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる