1 / 9
一目惚れの理由がおかしくありませんこと!?
しおりを挟む
もう限界。
甘くて美味しいからといって、あんなに呑むんじゃなかった。
お酒というものが、こんなにも急激に尿意をもよおすものだったなんて。
庭園の草花たちには申し訳ないけれど背に腹は代えられない。
少し前までは普通に行われていた行為だと学んだことがあるし、どうか許してほしい。
私はドレスのスカートをたくしあげると、勢いよくドロワースをずり下ろした。
かさばるスカートを抱えてその場にしゃがみ込み、靴にかからないよう脚を広げて。
あ、出る————
「お嬢さん、ご気分が優れないのですか?」
「え」
背後から心配そうに顔を覗き込んできたのは、紺碧の制服をまとった警備の騎士様だった。
絹糸のような白銀の髪に、思慮深い翡翠の瞳。もしや一緒にデビュタントを迎えた友人たちが頬を染めて噂していた、鉄壁の騎士様ことハルド=レンブロー伯爵では!?
慌てて陰部に力を込めても、一度解放しかかったものを止めることは叶わず。
騎士様の見つめる先で、勢いよく黄金の液体が噴き出した。
ぷしっ……しょぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
月の明るい夜。
遠くのホールから聞こえてくる楽団の演奏。
しょぁぁぁぁぁぁぁぁ……
流れ星のように見事な放物線を描いて地面に吸い込まれていく黄金を、騎士様と二人、しばし無言で見守った。
ぽた……、ぽた……
「…………」
「どうぞ、こちらをお使いください」
そう言って差し出されたのは、見るからに上等そうなシルクのハンカチ。
私はといえば、信じがたい現実の受け入れを拒否して完全に思考を停止していた。
「…………」
「お嬢さん? そのままではお風邪を召されてしまいます。…………ちょっと失礼」
濡れて外気に晒されスースーとしていた陰部を、やわらかな感触が撫でる。
ギギギギと視線を下げれば、騎士様が自らのハンカチでぽんぽんと私の陰部を拭っていた。
「○%#△×!?」
「ほら、立ち上がって? ドレスがシワになってしまう」
手と腰を支えて導かれ、呆然と立ち上がる。
ドレスのシワなんかより、騎士様がハンカチを元通り懐にしまったことのほうが気になる。
水溜まりのない地面に跪いた騎士様は、私の足元にわだかまったドロワースを引き上げると、スカートの中に顔と手を突っ込むようにしてきちんとドロワースの紐を結んでくれた。
「……ア、リガト、ウ……ゴザ……マス……?」
嘘よ。嘘。嘘。絶対信じない。
これは夢これは夢これは夢……。
「灯りの届かない場所には不埒な輩も現れます、女性が一人で庭園の奥まで行っては危険ですよ。よろしければ会場までお送りしましょう」
これは夢これは夢これは夢これは夢……。
「その夕陽色の髪……、財務官ウォルダー子爵のご息女、ミリア嬢では? ウォルダー子爵のご息女自慢を耳にするたび、どのような方なのか気になっていたのです」
「ひっ————人違いですわぁぁぁぁぁぁ!」
私は再びスカートをたくしあげると、あらんかぎりの全速力でその場を走り去った。
女性には目もくれないと噂される鉄壁の騎士様から届いた婚姻の打診に、一家揃って慌てふためくことになるのはそれから数日後のお話。
甘くて美味しいからといって、あんなに呑むんじゃなかった。
お酒というものが、こんなにも急激に尿意をもよおすものだったなんて。
庭園の草花たちには申し訳ないけれど背に腹は代えられない。
少し前までは普通に行われていた行為だと学んだことがあるし、どうか許してほしい。
私はドレスのスカートをたくしあげると、勢いよくドロワースをずり下ろした。
かさばるスカートを抱えてその場にしゃがみ込み、靴にかからないよう脚を広げて。
あ、出る————
「お嬢さん、ご気分が優れないのですか?」
「え」
背後から心配そうに顔を覗き込んできたのは、紺碧の制服をまとった警備の騎士様だった。
絹糸のような白銀の髪に、思慮深い翡翠の瞳。もしや一緒にデビュタントを迎えた友人たちが頬を染めて噂していた、鉄壁の騎士様ことハルド=レンブロー伯爵では!?
慌てて陰部に力を込めても、一度解放しかかったものを止めることは叶わず。
騎士様の見つめる先で、勢いよく黄金の液体が噴き出した。
ぷしっ……しょぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
月の明るい夜。
遠くのホールから聞こえてくる楽団の演奏。
しょぁぁぁぁぁぁぁぁ……
流れ星のように見事な放物線を描いて地面に吸い込まれていく黄金を、騎士様と二人、しばし無言で見守った。
ぽた……、ぽた……
「…………」
「どうぞ、こちらをお使いください」
そう言って差し出されたのは、見るからに上等そうなシルクのハンカチ。
私はといえば、信じがたい現実の受け入れを拒否して完全に思考を停止していた。
「…………」
「お嬢さん? そのままではお風邪を召されてしまいます。…………ちょっと失礼」
濡れて外気に晒されスースーとしていた陰部を、やわらかな感触が撫でる。
ギギギギと視線を下げれば、騎士様が自らのハンカチでぽんぽんと私の陰部を拭っていた。
「○%#△×!?」
「ほら、立ち上がって? ドレスがシワになってしまう」
手と腰を支えて導かれ、呆然と立ち上がる。
ドレスのシワなんかより、騎士様がハンカチを元通り懐にしまったことのほうが気になる。
水溜まりのない地面に跪いた騎士様は、私の足元にわだかまったドロワースを引き上げると、スカートの中に顔と手を突っ込むようにしてきちんとドロワースの紐を結んでくれた。
「……ア、リガト、ウ……ゴザ……マス……?」
嘘よ。嘘。嘘。絶対信じない。
これは夢これは夢これは夢……。
「灯りの届かない場所には不埒な輩も現れます、女性が一人で庭園の奥まで行っては危険ですよ。よろしければ会場までお送りしましょう」
これは夢これは夢これは夢これは夢……。
「その夕陽色の髪……、財務官ウォルダー子爵のご息女、ミリア嬢では? ウォルダー子爵のご息女自慢を耳にするたび、どのような方なのか気になっていたのです」
「ひっ————人違いですわぁぁぁぁぁぁ!」
私は再びスカートをたくしあげると、あらんかぎりの全速力でその場を走り去った。
女性には目もくれないと噂される鉄壁の騎士様から届いた婚姻の打診に、一家揃って慌てふためくことになるのはそれから数日後のお話。
95
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。


お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる