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一目惚れの理由がおかしくありませんこと!?
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もう限界。
甘くて美味しいからといって、あんなに呑むんじゃなかった。
お酒というものが、こんなにも急激に尿意をもよおすものだったなんて。
庭園の草花たちには申し訳ないけれど背に腹は代えられない。
少し前までは普通に行われていた行為だと学んだことがあるし、どうか許してほしい。
私はドレスのスカートをたくしあげると、勢いよくドロワースをずり下ろした。
かさばるスカートを抱えてその場にしゃがみ込み、靴にかからないよう脚を広げて。
あ、出る————
「お嬢さん、ご気分が優れないのですか?」
「え」
背後から心配そうに顔を覗き込んできたのは、紺碧の制服をまとった警備の騎士様だった。
絹糸のような白銀の髪に、思慮深い翡翠の瞳。もしや一緒にデビュタントを迎えた友人たちが頬を染めて噂していた、鉄壁の騎士様ことハルド=レンブロー伯爵では!?
慌てて陰部に力を込めても、一度解放しかかったものを止めることは叶わず。
騎士様の見つめる先で、勢いよく黄金の液体が噴き出した。
ぷしっ……しょぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
月の明るい夜。
遠くのホールから聞こえてくる楽団の演奏。
しょぁぁぁぁぁぁぁぁ……
流れ星のように見事な放物線を描いて地面に吸い込まれていく黄金を、騎士様と二人、しばし無言で見守った。
ぽた……、ぽた……
「…………」
「どうぞ、こちらをお使いください」
そう言って差し出されたのは、見るからに上等そうなシルクのハンカチ。
私はといえば、信じがたい現実の受け入れを拒否して完全に思考を停止していた。
「…………」
「お嬢さん? そのままではお風邪を召されてしまいます。…………ちょっと失礼」
濡れて外気に晒されスースーとしていた陰部を、やわらかな感触が撫でる。
ギギギギと視線を下げれば、騎士様が自らのハンカチでぽんぽんと私の陰部を拭っていた。
「○%#△×!?」
「ほら、立ち上がって? ドレスがシワになってしまう」
手と腰を支えて導かれ、呆然と立ち上がる。
ドレスのシワなんかより、騎士様がハンカチを元通り懐にしまったことのほうが気になる。
水溜まりのない地面に跪いた騎士様は、私の足元にわだかまったドロワースを引き上げると、スカートの中に顔と手を突っ込むようにしてきちんとドロワースの紐を結んでくれた。
「……ア、リガト、ウ……ゴザ……マス……?」
嘘よ。嘘。嘘。絶対信じない。
これは夢これは夢これは夢……。
「灯りの届かない場所には不埒な輩も現れます、女性が一人で庭園の奥まで行っては危険ですよ。よろしければ会場までお送りしましょう」
これは夢これは夢これは夢これは夢……。
「その夕陽色の髪……、財務官ウォルダー子爵のご息女、ミリア嬢では? ウォルダー子爵のご息女自慢を耳にするたび、どのような方なのか気になっていたのです」
「ひっ————人違いですわぁぁぁぁぁぁ!」
私は再びスカートをたくしあげると、あらんかぎりの全速力でその場を走り去った。
女性には目もくれないと噂される鉄壁の騎士様から届いた婚姻の打診に、一家揃って慌てふためくことになるのはそれから数日後のお話。
甘くて美味しいからといって、あんなに呑むんじゃなかった。
お酒というものが、こんなにも急激に尿意をもよおすものだったなんて。
庭園の草花たちには申し訳ないけれど背に腹は代えられない。
少し前までは普通に行われていた行為だと学んだことがあるし、どうか許してほしい。
私はドレスのスカートをたくしあげると、勢いよくドロワースをずり下ろした。
かさばるスカートを抱えてその場にしゃがみ込み、靴にかからないよう脚を広げて。
あ、出る————
「お嬢さん、ご気分が優れないのですか?」
「え」
背後から心配そうに顔を覗き込んできたのは、紺碧の制服をまとった警備の騎士様だった。
絹糸のような白銀の髪に、思慮深い翡翠の瞳。もしや一緒にデビュタントを迎えた友人たちが頬を染めて噂していた、鉄壁の騎士様ことハルド=レンブロー伯爵では!?
慌てて陰部に力を込めても、一度解放しかかったものを止めることは叶わず。
騎士様の見つめる先で、勢いよく黄金の液体が噴き出した。
ぷしっ……しょぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
月の明るい夜。
遠くのホールから聞こえてくる楽団の演奏。
しょぁぁぁぁぁぁぁぁ……
流れ星のように見事な放物線を描いて地面に吸い込まれていく黄金を、騎士様と二人、しばし無言で見守った。
ぽた……、ぽた……
「…………」
「どうぞ、こちらをお使いください」
そう言って差し出されたのは、見るからに上等そうなシルクのハンカチ。
私はといえば、信じがたい現実の受け入れを拒否して完全に思考を停止していた。
「…………」
「お嬢さん? そのままではお風邪を召されてしまいます。…………ちょっと失礼」
濡れて外気に晒されスースーとしていた陰部を、やわらかな感触が撫でる。
ギギギギと視線を下げれば、騎士様が自らのハンカチでぽんぽんと私の陰部を拭っていた。
「○%#△×!?」
「ほら、立ち上がって? ドレスがシワになってしまう」
手と腰を支えて導かれ、呆然と立ち上がる。
ドレスのシワなんかより、騎士様がハンカチを元通り懐にしまったことのほうが気になる。
水溜まりのない地面に跪いた騎士様は、私の足元にわだかまったドロワースを引き上げると、スカートの中に顔と手を突っ込むようにしてきちんとドロワースの紐を結んでくれた。
「……ア、リガト、ウ……ゴザ……マス……?」
嘘よ。嘘。嘘。絶対信じない。
これは夢これは夢これは夢……。
「灯りの届かない場所には不埒な輩も現れます、女性が一人で庭園の奥まで行っては危険ですよ。よろしければ会場までお送りしましょう」
これは夢これは夢これは夢これは夢……。
「その夕陽色の髪……、財務官ウォルダー子爵のご息女、ミリア嬢では? ウォルダー子爵のご息女自慢を耳にするたび、どのような方なのか気になっていたのです」
「ひっ————人違いですわぁぁぁぁぁぁ!」
私は再びスカートをたくしあげると、あらんかぎりの全速力でその場を走り去った。
女性には目もくれないと噂される鉄壁の騎士様から届いた婚姻の打診に、一家揃って慌てふためくことになるのはそれから数日後のお話。
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