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しおりを挟む帰る馬車の中で、レイラは熱くなった頬を手で扇ぎながら冷ましていた。
レイラの歩幅に合わせながら歩いていたユーリの横顔を、レイラは帰り道にバレないように盗み見ていた。二人の視線があった時、ユーリは優しい笑みでレイラに微笑んだ。
優しく、愛しいものを見るような目で……。
レイラは、そんなユーリの視線で何故か恥ずかしくなってしまった。
馬車に乗る頃には、別れの挨拶でユーリと目線を合わせるのも恥ずかしい程だった。
だが、そんな事も気にしないかの様にユーリはレイラの額に口付けを落とすと小さな声で「また会おう」と言い
、馬車の扉は閉められた。
何が起こったのか分からず放心していたレイラは、城から少し離れた頃に先程の事を思い出し、恥ずかしくなって頬に熱を持ち始めた。
「お嬢様、その真っ赤な顔をどうにかしないと旦那様達が凄い事になりますよ」
「そ、そんなに真っ赤かしら。」
ヴィオラに指摘されて、レイラは必死に手で顔を扇ぐ。
ヴィオラは、レイラを溺愛しすぎている二人がユーリの事で顔を真っ赤にしているレイラを見て、発狂しないわけがない。そんな二人を止めるのがヴィオラは、めんどくさいと内心で思っていた。
レイラの熱くなっていた頬も冷め、もう少しで家に着く頃だと思っていた時だった。
乗っていた馬車がいきなり止まった。それと同時に、外は騒がしくなった。
「きゃっ! 止まったわね、どうしたのかしら?」
「……お嬢様、私は外を見てきます。ここに大人しく居といて下さい。」
「えっ!? ヴィオラ、私も……」
レイラの返事を聞かず、ヴィオラは馬車の扉から外に出ていってしまった。
外に出るなと言われたが、気になったレイラは窓から外の様子を覗く。
馬車の周りには、武装している人達が大勢いた。目深くフードを被っており、顔は見えない。だが、武器を携えており敵意があることは分かる。
外の声は聞こえないが、ヴィオラと男が何かを言い争っているみたいだった。
「そのお嬢ちゃんを渡してくれるだけで見逃してやるよ」
「渡す訳ないでしょう?」
「はっ! 人数で負けているのに勝てると思っているのか!?」
「お前達は私達を馬鹿にしすぎだ」
馬車の扉の前には、中に居るレイラを守るようにヴィオラと護衛の男が一人立っている。
武装している一人が剣を抜いたと同時に、皆が動き始めた。ヴィオラは、馬車に近づこうとしている者達を蹴散らしている。
数の多さでは負けているが、護衛の者やヴィオラはやはり強い。
レイラは、何も出来ないもどかしさがあった。だが、ヴィオラが言ったように自分が外に出ていってしまったら迷惑がかかってしまう。この武装している人達の目的は、自分なのだとレイラは分かっていたから……。
だから、レイラはただ戦っている所を見て勝てる様に祈るしかなかった。もし、何かあった時に自分も戦えるよう、側に短剣を置いておく。
護衛の人達も、ヴィオラも強さは負けていない。ただ、圧倒的な人数の差で辛そうだ。
何も出来ない自分がレイラは嫌だった。でも、ここで剣を持って馬車の外に出たとしてもお荷物になるだけだと自分自身分かっていた。
自分を守れる様にと、幼い頃から剣術は習っているが男の人と比べたら力だってない。そんな自分が今出ていったら人質になって、こちら側が不利になるに決まっている。
ヴィオラ達の邪魔になるのが嫌なため、飛び出したい気持ちをグッと堪える。
どれだけ時間が経っただろうか……。
そんなに長くは時間は経ってないだろうけれど、レイラは長く感じた。
遠くの方から何かが近づいてくる音がした。
その音はどんどんと大きくなって、レイラ達のいる近くで止まった。
「お前達……拘束しろ」
「「「はっ!!」」」
低音だが、レイラの大好きな声が聞こえた……。
顔を上げると、馬に乗ったユーリが居た。
直ぐ様クロウが城に知らせに行っていたのだ。
知らせを知ったユーリは、騎士団に付いてくるように命令をすると、何も説明しないまま急いで飛び出してきた。
騎士団の者達も、あの冷静沈着のユーリが焦るということはレイラに何かがあったのだろうと思っていた。
それだけ、レイラ中心でユーリが動いているのは皆が知っていた。
武装していた男達は、どんどんと拘束されていく。騎士団に男達を牢へと連れていき、誰が黒幕なのかを聞くように命令をするとユーリは馬から降りる。拘束されている男達を横目にレイラが乗っている馬車に近づいてくる。馬車の前までくると、側に立っていたヴィオラへと目線を向ける。
「開けてくれるかい?」
ガチャッ
レイラとユーリの間を隔てていた馬車の扉が開かれた。
「ユーリ……様……。」
「レイラ、おいで」
ユーリが手を広げ、そこにレイラが飛び込んだ。
レイラの目からは、我慢していた涙が流れ落ちる。
「……レイラ、無事で良かった。」
「……ユーリ様」
レイラが安心するまで、ユーリはずっと抱き締めていた。泣きつかれたレイラは、ユーリの腕のなかで眠ってしまった。
「レイラの家には連絡を。レイラを城へと連れて帰る。いいな? ヴィオラ」
「……畏まりました。旦那様に事情を説明して参りますので、お嬢様をお願い致します。」
「あぁ」
ユーリはレイラを大事そうに抱き上げると、馬車に乗り込み城へと向かった。
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更新ありがとうございます!お待ちしてました♡
うさぎ様
読んで下さりありがとうございます✨大変お待たせ致しました(о´∀`о)
いつも楽しく拝読いたしております。
更新嬉しいです。
また、お待ちしております💕
RoseminK様感想ありがとうございます!
お待たせいたしました(о´∀`о)これからも楽しんで頂けるように頑張ります😊✨