王子は公爵令嬢を溺愛中

saku

文字の大きさ
上 下
14 / 30

14

しおりを挟む
ヴィオラが時計を見た途端、慌てた表情でレイラの方を振り向いた。

「大変です! お嬢様、そろそろ行かないと間に合いません!」

「あらっ! 急がないと!!」

ヴィオラに促され、レイラは急いで馬車に乗る。
貴族は基本、学校に行く際は馬車を使用する。
本当は、学園には家から近い為歩いて行きたかったレイラだったが、カーチスやヴィオラ。さらには、使用人達にまでも一昨日の夜に反対されてしまったのだ。
カーチス達は馬車で行くと思っていたみたいだった。レイラの「徒歩で行くのが楽しみです!!」と、言う言葉を聞くまで……。
それでもレイラは、最初は諦めてなかった。護身術を学んでいて強いと、ヴィオラもいるんだから危なくないと言っても誰一人首を横には振らなかった。

唯一、レオンは「良いんじゃない? レイラって、他の令嬢より強いし」と、柔らかな笑みを浮かべ優雅に紅茶を啜りながら言ってた。そんなレオンに対し、他の人達は「強くても殿下の婚約者なんですから、形だけでもきちんと馬車に乗っていって下さい! 」と、すごい形相で言われたのでレイラは渋々了承をしてしまった。
本当は、帰り道に寄り道とかをレイラはしてみたかったのだ。

(寄り道をして、街を見たり美味しそうな食べ物を食べたりしてみたかったのに~。だけど、あんなに必死に言われたらしょうがないわよね。それよりも、もう物語が始まってしまうのね……。)

馬車に乗りながら、景色を見るために外を見ているがレイラはそればかり考えてしまい、景色を楽しむ余裕なんてなかった。
これからレイラは、ユーリとガーネットの仲良いところを見ないといけないんだと思うと、憂鬱になり溜め息をつきたくなってしまった。
分かっていても、小さい頃から一緒の婚約者が違う令嬢と仲良くするのは気分が悪い。

(こんな思いをしたくなくてユーリ様を避けていたのに、全然婚約解消する気配がないし……。)

「ハァー……行きたくないわ……。」

「いや。まだ着いてもいないのに、何言っているんですか。それに、一昨日の夜はあんなに学園に行くのを楽しみにしていたのに、いきなりどうしたのですか?」

「一昨日の夜は、馬車で行かないと思っていたから……楽しみな事があったのに。それに残念ね、ヴィオラ。行かなくても私は分かってしまうのよ?  たとえば、ユーリ様に将来婚約を破棄されてしまうとか……。」

「寝言は寝て言ってください」

ヴィオラは、呆れた様な表情で直ぐ様反論をした。

(本当かもしれないのに……。今は嫌われていないみたいだけれど、ガーネット様にユーリ様がもう一度会ったらどうなるか……。あれから、ガーネット様は可愛く成長しているに違いないわ! 今は、ユーリ様が私の事を好きだと言っていても、ユーリ様はヒロインであるガーネット様に惚れてしまうかもしれない!)

レイラがそんなことを考えていると、それを見たヴィオラが小さく呟いた。

「ユーリ様がお嬢様を離す訳無いじゃないですか。ちょっと会わなかっただけであんな状態だったのに……。」

「……あんな状態って? 」

「おっと……申し訳ございません。今のは、忘れてください」

(気になる。ユーリ様に何かあったのかしら? この頃、ユーリ様を避けていたからか何があったか分からないわ……。)

ヴィオラはその時の事を思い出したのか、困った様な顔をしている。
どんな状態だったのか凄く気になり、レイラはヴィオラの方に前のめりになってしまう。
馬車の中ということを忘れ近づいた為、レイラとヴィオラの距離がぐっと近くなる。

「……レイラ。僕という婚約者が居ながら浮気かい? お仕置きしないといけないね?」

レイラがヴィオラを問い詰める為に詰め寄っていると、いきなり聞きなじみのある声が聞こえ、後ろからお腹に腕が回され後に抱き寄せられた。レイラが恐る恐る後ろを振り返ると、ユーリが笑顔でレイラを見下ろしていた。

(お仕置き!? ユーリ様が言ったら、本当にしそうだから怖いわ。お仕置きされたら、私の心臓が持たないと思うの。何をするのか分からないけれど……。)

「ユ、ユーリ様!? 浮気では、ないですからね!?  だって、私の婚約者様はユーリ様だけだもの!!」

「フフッ。そっか、嬉しいな~」

真っ赤な顔をしながら言い訳をしているレイラを、ユーリは嬉しそうな顔をしながら抱き締める。
前に座っていたヴィオラは、ユーリが居た事を分かっていたみたいで「またか」と、言う顔をしている。


(……ヴィオラったら、ユーリ様が居るって言ってくれても良かったじゃない! 言ってくれたら、ユーリ様が怒る事も私が恥ずかしい思いをする事も無かったのに!! でも、いつの間にか学園に着いていたのね。全然気づかなかったわ……。)

レイラを乗せた馬車は、いつの間にか学園に着いており。門の前に止まっていた。
馬車を見つけたユーリは、レイラを迎えに馬車の近くまで来た時にヴィオラに詰め寄っているレイラを見つけてしまったのだった……。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜! 【第2章スタート】【第1章完結約30万字】 王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。 主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。 それは、54歳主婦の記憶だった。 その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。 異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。 領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。             1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します! 2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ  恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。  <<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています

高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。 そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。 最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。 何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。 優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。

どんなに私が愛しても

豆狸
恋愛
どんなに遠く離れていても、この想いがけして届かないとわかっていても、私はずっと殿下を愛しています。 これからもずっと貴方の幸せを祈り続けています。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

処理中です...