皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku

文字の大きさ
36 / 36
第二章

イーサン・フォーサイス

しおりを挟む
ブランの名を呼びながら入って来たのは、獣人国の王でもあるイーサン・フォーサイスだった。
金色の長髪を右側で結んでおり、髪の毛と同じ色の瞳は真っ直ぐブランを見ている。
イーサンはライオンの獣人なので、頭の所には小さな耳がついている。

「……イーサン、いきなり入って来るな」

「何故だ?  手紙は出しただろう?」

「当日に手紙を出す馬鹿がいるか」

「ハハハッ。それはすまない!」

ブランは呆れたような表情だが、イーサンは気にしていないのか嬉しそうに笑っている。
イーサンが獣人王となる前、この国に一人で訪れた。この際にブランと出会い、二人は友人の様に接しており。気を許している仲なのだ。

「……よくそんなので、王が勤まっているな」

「ハハハッ!  そんな事を、私に言うのはお前だけだぞ?」

「本当に、お前はいつ会っても変わらないな……。」

「むっ。そこに居るのが、ブランの番でリゼリア嬢の生まれ変わりであるお嬢さんか?」

イーサンは、ブランの横に居たルミエールに気づいた。
何故、リゼリアの生まれ変わりだと気づいたのかなんて聞かない。イーサンは気づいたのだろう。番であるリゼリアが亡くなった後も、結婚しなかったブランが婚約を発表したのだ。
あれだけリゼリアを愛していた男が、婚約を発表した相手は、もしかしたらリゼリアの生まれ変わりなのではないかと……。
だが、会うまではイーサンもまだ疑っていた。だが、会った時の印象もルミエールの魔力もリゼリアと似ていたのだ。

「この姿では初めましてですね。お元気でしたか? 獣人王」

「うむ。ブランが婚約発表したと聞いたときは、耳を疑ったが本当にリゼリア嬢の生まれ変わりなのだな。今の名は何て言うのだ?」

「失礼致しました。ルミエール・リフェアと申します。」

「ルミエール嬢か……また会えて嬉しいぞ」

パンッ

イーサンは、握手をしようとルミエールの方にふわふわの毛の中に肉球が見える手を出した……。その手に導かれる様にルミエールは、手を伸ばしそうになった時だった。イーサンの手をブランがはね除けた為、ルミエールが伸ばしそうになっていた手は行き場を失くしていた。

「……触るな」

「ハハハッ!  男の嫉妬は見苦しいぞ?  ブラン。」

「前に会った時、リゼリアがお前の手を嬉しそうに揉んでいたのだ、ルミエールも一緒の事をしそうだろ!」

「ハハハッ!  そう言えば、そんな事があったな」

リゼリアだった頃から、動物好きなルミエール。初めて
イーサンに会った時、握手をしたリゼリア。
その時、ふわふわとした毛の中に隠れている肉球を無意識にプニプニと揉んでしまっていた。
その時、リゼリアの表情がとても嬉しそうにしていた為、ブランは嫉妬してしまいイーサンに向けて殺気を放っていた。
その後は、誤解を解くのにリゼリアは必死にブランを止めた。当のイーサンは、何故か楽しそうに笑っていた。
そこからとは言うものの、リゼリアは獣人の男にはむやみに近づかないと言うのを約束させられていたのだ。

「ルミエール……」

「は、はい!」

ルミエールの事を、低い声でブランが呼ぶ。怒られてしまうのかと思い、ルミエールは強張ってしまった。
振り向いた先のブランは、無表情でルミエールを見ていた。その目は、冷たく暗い。

「……獣人の男には、近づかないと言うのと触らないと言うことを約束しておくれ。じゃないと、その男を私は殺ってしまいそうだ……。」

「わ、分かったわ!」

(……あの目のブランは、本当に殺りかねないわ。私が近づいただけで殺られるなんて申し訳ないわ……気を付けないと。)

ルミエールの返事を聞いたブランは、いつもの様な表情に戻るとにっこりと微笑んだ。

「……ふむ。ルミエール嬢も、こんな男に捕まって大変だな!」

二人のやり取りを聞いていたイーサンは、楽しそうな表情で二人の方に近づいてくる。
近づいてくるイーサンを見て、ブランはルミエールを自分の方へと抱き寄せ。整っている顔を歪めた。

「……近づくな」

「そんな心が狭いと嫌われるぞ?」

その言葉を聞いた途端、ブランは勢いよくルミエールを見た。
その表情は、捨てられそうな子犬の様な表情をしている。眉は下がっており、悲しそうだ……。

「……そんな事無いわ?」

ルミエールの言葉を聞いたブランは、安心した様にため息をついた。

「クククッ。本当に、お前は見ていて飽きないな!」

「……喧嘩うっているのか?」

「そう怒るな。友ではないか」

「お前と友になった覚えはないぞ!」

「ハハハッ。 この恥ずかしがり屋め!」

「ハァー。本当に、毎回毎回お前は話を聞かないな。私の話を聞く努力をしろ!!」

「話を聞いているではないか」


ルミエールは、二人のやり取りを聞きながら何だかんだ仲良しだと思いながらやり取りを聞いていた。
微笑ましそうに見ていたのが気になったのか、ブランは不思議そうにこちらを見た。

「……ルミエール。そんなに嬉しそうにして、良いことでもあったのかい?」

「はい。お二人が変わらず仲が良さそうなのが嬉しくて。」

「……そうか」

「ハハハッ。ルミエール嬢に言われたら、否定出来んのか?」

「……煩い。それで?  何しに来たんだ」

「……?  だから祝いに来たと言っただろう」

「……本当にそれだけか?」

「そうだが?」

きょとんとした顔をしているイーサンを見たブランは、深いため息をついた。
その後、イーサンが一人で竜人国に来た事を知り、慌てて来たのだろう。汗をかきながら慌てた表情をしている獣人王の従者を使用人が連れてきた事によって、その場は終わったのだった。

しおりを挟む
感想 29

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(29件)

MRK
2025.06.08 MRK

気長に続きを楽しみに待ってます!

解除
みき
2020.12.14 みき

こんばんは。初めまして。王家にも色々ありますよね?中国やイギリスみたいに前の王家が負けて、新しい王家が建ち国名も変わる。フランス革命やロシア革命のように、現王家を武力で倒し共和制の国に変える。最初から読んでいて「この王家は後々どうなるのだろう?どうなっていくのだろう?」とウキウキ・ワクワク・ドキドキしながら読んでいます。「拐われ」の話の中に訂正してほしい文章がありましたので、報告しときますね。作者さんの時間があるときに訂正をお願いします。
「手前取らせやがって」→「手間、取らせやがって」

2020.12.14 saku

みき様感想ありがとうございます。
そう言って頂けるととても嬉しいです。ありがとうございます(^^)これからどうなっていくのかお楽しみに(о´∀`о)

誤字報告ありがとうございました!
訂正致しました。

解除
るりまま
2020.11.04 るりまま

更新有難うございます。
楽しく拝読させて頂いてます❤️

2020.11.04 saku

感想ありがとうございます!
大変お待たせいたしました😊第二章も楽しんで頂けると嬉しいです(о´∀`о)

解除

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する

雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。 ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。  「シェイド様、大好き!!」 「〜〜〜〜っっっ!!???」 逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。