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第一章
閑話.皇帝の目覚め
しおりを挟むそれは、ブランが目覚めた時まで遡る。
ブランの目が覚めると、町中に鐘が響き渡った。
直ぐ様、あの子が居る場所を探ろうと。ブランが起き上がった時だった。
「ブラン様、お目覚めですか。」
部屋のドアが開き、この国の宰相でもある。ネスが入ってきた。先ほどまで、この城に気配が無かった。急いで、転移魔法で戻ってきたのだろう。
「ネス。あの子がこの国に居る」
「そうですか。良かったですね。」
ネスは、何故か素っ気なかった。
(まだ、あの子……リゼリアを守れなかった私達を怒っているのだろうか。)
あの時、ネスはこの国には居なかった。隣国に行っていたのだ。リゼリアが亡くなったと聞いて、ネスは隣国から急いで帰ってきた。
リゼリアが亡くなった時に言われた。
「何をしていたのだ。何故、無理矢理にでも会いに行かなかった!」と、泣きながら言われた。
ネスとリゼリアは仲が良かった為。友が亡くなったという悲しさ。そして、ブランの番を守れなかったという悔しさがあったのだ。
そんなネスが、友であるリゼリアが生まれ変わったと聞いて嬉しく無いわけない。
「……ネス。リゼリアが何処に居るのか知っているのか?」
(もしかして、もう会ったのか? ……狡い。)
「えぇ。知っていますよ。でも言いません。」
「何故だ!!」
「……生まれ変わったという事については、私としては凄く喜ばしい事です。でも、見つけるなら聞くんじゃなくて自力で見つけてみなさい。」
ネスはそう言うと、紙の山を机の上にドンッっと置いた。
「……それは何だ」
「ブラン様が目覚めたと言うことで、これまでの報告書です。全て! 目を通して下さい」
(……この腹黒め。これを見ないと、リゼリアの所に絶対行かせてもらえないのか。)
「……分かった」
そこから、全て報告書には目を通した。
その中に、リゼリアを死に追いやった奴達の報告書もあった。
いつもなら、ネス自身が手を下す事など無い。だが、今回の処分についてはネスがしたみたいだ。
報告書には、門を開いたと記載されている。
門を開くのは極大魔法の為、魔力が多い者しか出来ない。
門を開くと、そこから黒い手が出てきて、重い罪を犯した者だけが門の中に引きずり込まれる。
その中に入ると、出てくる事も死ぬ事も。そして、生まれ変わる事も出来ないのだ。
その黒い手は、悪魔の手とも呼ばれているが本当の事は分からない。
報告書を読んで、当たり前だと思った。
(この国の……それも、妃になる者を死に追いやったのだ! どれだけ罪が重いか、知ればいい。そして精々、向こうで苦しめばいいのだ。)
報告書を見ている途中に、ネスは何処かに行ってしまっていた。
「……ふぅ~。終わった」
(あぁ、やっと探しに行ける。)
そう思うと、小さい子どもの様にわくわくしてしまう。
直ぐ様、街に転移する。街に行くと、ブランが目覚めたと言うことで歓喜に沸いていた。
全身が隠れるローブを羽織、フードを目深に被っている為。街の者達は、気付いて居ないみたいだった。
リゼリアの気配を辿っていくと、路地裏にあるお店に着いた。
そこから、騎士団の者が出てきた。
「えっ!? ブラン様!?」
(むっ。騎士団の者には分かってしまうのか。)
お店に入る事を伝えると、慌てた表情で男は店の中へと行ってしまった。その間に、着ていたローブを脱ぐ。
暫くすると、先ほどの男ともう一人出てきた。
「ブラン様。中で、団長と宰相様がお待ちです」
(ネスは此処に来ていたのか。それよりも、シルも知っていたとは…。)
そう思いながら、ドアを開け店の中に入る。
店の中には、シルとネス。そして、一人の女性が居た。
(……あぁ、リゼリアだ。リゼリアが帰って来てくれたのだ!)
そう思うと、嬉しくなり。リゼリアの所に行く。
(……神よ。また会えた事に感謝します。)
いつもは信じていない神に、感謝しようと思うほど嬉しい。
リゼリアは生まれ変わっても。やはり、前のように優しかった。
守れなかった事、気付いてやれなかった事を気にしなくてもいいと。自業自得だと。そう言った。
それでもブランは誓う。次こそは、絶対に守り抜くと…。
リゼリアに、城には戻らないと言われた。1から始めよう。と言われ気づく。
確かに、リゼリアが生まれ変わったという事が嬉しくて。ブランは、リゼリアとして接していたのだ。
あの頃は、守ってやらねば。居場所になってやらねば。と思っていたが、自分の居場所も。やりたい事もルミエールは見つけている。
ブランは、リゼリアの記憶を持っているルミエールの嬉しい時などの、様々な顔を見たい。そう思うと、了承するしかなかった。
あまり会えないと言うことには不満そうだ。
会えないかわりに、ルミエールに黒の石が付いている耳飾りを渡す。
これには、防御魔法などを付与していた。
ルミエールに、悪意を持つものを近寄らせず。危害を加えようとすると、防御と反撃をするようにしたのだ。
後、何処に居るのかも分かり。そして、その場所に転移出来る様にもなっている。
(さっさと、煩わしい奴達の挨拶を片付けてルミエールに会いに来なければ。)
ブランは、ルミエールのおでこに口づけを落とすと。ルミエールから離れる。
やはり毎日会いに来ようとブランは心に決め。ブラン達はルミエールに別れを告げた。
そして、転移魔法で城へと戻ったのであった。
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