魔王様に溺愛されながらも異世界快適ライフ

saku

文字の大きさ
上 下
12 / 16

12.美味しい物は正義②

しおりを挟む

ミオが厨房に着き、まず探したのはジーンだった。
厨房の中では、忙しそうに皆が動いている。ミオは、邪魔にならないように外からジーンを探す。前を通る人や
、作業をしている人の顔を見る。だが、ジーンが見つからない。

「おっ? ミオ、そんな所で何をしているんだ?」

ミオがキョロキョロとしながら厨房を覗いていると、後ろからいきなり声を掛けられた。

「わっ!! ……ジーンしゃん!!」

「すまんな。びっくりさせたか? それよりも、こんな所で何をしているんだ?」

何処かに行っていたのか、ジーンは大きな銀色の容器を手に持ってミオの後ろから現れた。
ミオの横を通りすぎ、ジーンが厨房に入っていき台の上に容器を置くと、ミオの元へ戻ってきてくれた。

「あのね、あのね。ジーンしゃんにおにぇがいがあったの!」

「お願い?」

ミオの目線に合わせる様にジーンはしゃがんでくれた。

「あのね、クラウドしゃまにあまーいのちゅくりたいの!」

「なるほどな。お菓子を作るのか」

「あい!」

「だが、ミオは小さいからな……火とかも危ないし」

「だいじょーぶ!! かんたんなやちゅ、ちゅくりゅ!」

(火を使うときだけ、ジーンさんに手伝って貰わないといけないけれど……。)

「……分かった。だが、何かを切ったり火を使う時は俺がやるぞ?」

「あい! ありあとー!」

ジーンも仕事があって忙しいだろうに、手伝ってくれることにミオは感謝した。
ミオの返事を聞くと、ジーンは周りに居た人達に指示をする為にミオの側を少し離れた。

「……凄いな。料理長があんなに優しそうにしているの初めて見たよ。」

ミオの隣に立っていた男は、驚愕した様な表情をしながら言葉を落とす。

(そうなの? 初めて会った時からジーンさんは優しいからな~) 

「ジーンしゃんは、しゅごくやさちいよ!」

「……チビッ子、人族なのに魔族の俺らが怖くないのか?」

「……??」

ミオは、男に言われた言葉に首を傾げる。
ミオ自身、クラウドもジーンも他の魔族達も怖いとは思った事が無かったのだ。

「ハハハッ!  そうかそうか」

「クラウドしゃまもジーンしゃんも、みんなやちゃちくてだーいしゅき!」

「その言葉は、料理長本人に言ってやれ」

男は、苦笑いを浮かべながらミオの後ろを指差す。
何があるのかと後ろを振り向くと、ジーンが口に手を当てながら肩を震わしている。
顔は笑っている様な感じではなく、感動した様な表情をしていた。

「ジーンしゃん?」

「ミオ……お前はそのまま育ってくれ」

ジーンは、ミオの頭を優しく撫でる。

「ミオはねー、たいせちゅなひとをまもりゅためにちゅよくなるの!」

(あの時クラウド様が私を拾ってくれなかったら、あそこで死んでいたかもしれない……。この恩を返すためにも強くなって、皆の役に立ちたい。)

ミオが両手を握りしめて決心しているのを見たジーンは、微笑ましそうに微笑む。

「そうか、じゃぁ楽しみにしているな?」

「あい!」

「さて、ミオ。お菓子を作るぞ」

「あい! おねがいしましゅ!!」

「さて、まず手を洗わないといけないが……台が必要だ
な」

ミオが手を洗いやすいように台を持ってきてくれた。
その台に乗りながら、入念に手を洗う。

「しゅぐおっきくなりゅの!」

「そうだな。ミオもすぐ成長するだろうな。そうしたら、この台はいらなくなるな」

「あい!」

ジーンに抱き上げられて、ミオは台からおりる。
渡されたエプロンをした所で気づく。

(……何で子供用のエプロンがあるんだろう??)

今さっきお菓子を作りたいとクラウドに話した所だ。前からあったのかと思ったが、エプロンは綺麗で新品に近い。
疑問に思い、ミオが首を傾げているとジーンは可笑しそうに笑った。

「魔王様が急いで作らせたらしいぞ?」

「クラウドしゃまが!?」

「あぁ、子供用だからそんなに時間も掛からないだろうしな。作った奴も嬉しそうに作っていたらしいぞ?」

ジーンの話によると、ミオが入念に手を洗っている時にエプロンを持ってきてくれたらしい。
いつも服に興味がないクラウドが、細かくオーダーをしたことに作った人も嬉しそうに作っていたと、持ってきた人が言っていたらしい。

「クラウドしゃまと、しょの人にありあとーっていわにゃいと!」

「作ったやつは此処には居ないから、魔王様に言って伝えてもらったら良いんじゃないか?」

「しょうしゅるー!」

(後からクラウド様に忘れずに言わないと!)

作ってくれたエプロンは、白地でシンプルなデザインだがミオは好きだった。
後についた大きなリボンやフリルがついており可愛い。
ミオは髪を一つにまとめ、ジーンの方に近づく。


「よろちくおねがいしましゅ!!」

「ミオは何を作る予定だったんだ?」

「えーっとね。プリン!」

「プリン? 何だ、それは」

(そうか! この世界にはプリンはないんだ! あの甘くて美味しいお菓子を知らないなんて!)

「あのね、あのね。たまごちょ、みりゅくちょおしゃとう!」

「それだけで作れるのか?」

「あい!」

「それだったら、材料はあるから作れるな。凄いなミオは、そんなちっこいのにお菓子の作り方を知ってるなんて」

「えへへ~」

(中身は年取ってるなんて言えないよ……。)

ミオはそんな事を思いながら、材料を準備してくれているジーンの後ろ姿を眺めるのだった。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ
恋愛
 女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。  大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。  親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。 「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」  その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。  召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。 「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」  今回は無事に帰れるのか…?  ご都合主義です。  誤字脱字お許しください。

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

精霊に転生した少女は周りに溺愛される

紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。 それを見た神様は新たな人生を与える 親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。 果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️ 初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

俺の番が見つからない

Heath
恋愛
先の皇帝時代に帝国領土は10倍にも膨れ上がった。その次代の皇帝となるべく皇太子には「第一皇太子」という余計な肩書きがついている。その理由は番がいないものは皇帝になれないからであった。 第一皇太子に番は現れるのか?見つけられるのか? 一方、長年継母である侯爵夫人と令嬢に虐げられている庶子ソフィは先皇帝の後宮に送られることになった。悲しむソフィの荷物の中に、こっそり黒い毛玉がついてきていた。 毛玉はソフィを幸せに導きたい!(仔猫に意志はほとんどありませんっ) 皇太子も王太子も冒険者もちょっとチャラい前皇帝も無口な魔王もご出演なさいます。 CPは固定ながらも複数・なんでもあり(異種・BL)も出てしまいます。ご注意ください。 ざまぁ&ハッピーエンドを目指して、このお話は終われるのか? 2021/01/15 次のエピソード執筆中です(^_^;) 20話を超えそうですが、1月中にはうpしたいです。 お付き合い頂けると幸いです💓 エブリスタ同時公開中٩(๑´0`๑)۶

処理中です...