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番外編 なくなってしまった未来②

成長痛

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 アルチューロ叔父さんは夜か、雨の日しか外に出ない。墓地の見回りはたいてい夜に終わらせる。人を殺した夜は、たいていいつも上機嫌なのに今日は違った。最近ずっと体調が悪そうだ。白い百合の花束を強く握っていて、今にもしおれそうだ。
 たくさんの可哀想な子供たちを手にかけてきたのに、いざ自分が死ぬ番になったらこんなにもナイーブになるものなのだろうか。俺にはまだ理解できない。
「兄貴に挨拶しないと」
 言葉とは裏腹に、雑に花束を落とした。暗闇の中でも、白い花びらがバラバラに舞うのがわかった。叔父さんは忌々しい存在に憎しみをぶつけるように、さっきまで大事そうに握っていた花束を踏みつけた。
「どんな人だったの、その――」
「どんな? うーん、イケメンだったな~。美人の婚約者がいて、無能のくせに」
 冷ややかな声だった。叔父さんの兄は、俺が生まれる頃にはとっくに死んでいた――アルチューロ叔父さんが殺した。それで今の、こんなくだらない仕事墓地の管理を何年もさせられている、らしい。
「そうだな……ちょうどノア、お前みたいな」
 指を差されてドキリとした。長男の責任を果たしていない、そう言われている気がした。夜の風が肌寒い。
「なーんてね」
 冗談っぽくそのまま指を鳴らした。真っ暗な墓地にポツポツと光のオーブが飛ぶ。明るくなって、叔父さんのニヤついた表情も見えるようになった。
「また誘拐してこないとな」
 そうだ。血を吸う相手を確保しないと。親にも見捨てられたガキ負け組なんて、いくら殺したって問題ない。
 ――俺は特別だから。
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