転生したら大好きな乙女ゲームの世界だったけど私は妹ポジでしたので、元気に小姑ムーブを繰り広げます!

つなかん

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番外編 なくなってしまった未来①

リサ・ゴールドバーグという女

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「本当に十八歳?」
「その言葉、そっくりそのままお返ししても?」
 ラテン語の宿題が免除になるならやってやってもいい、とは言った。偉い人が学校の視察をするから護衛しろ、とかなんとか。
 開口一番とんでもなく失礼なことを訊いてきたから、指を一本へし折ってやろうか、と思った。
 世間知らずお坊ちゃんめ。爵位持ちというだけで私にナメた態度を取るのは、領地を持ってからにして欲しい。公爵家の長男、ギルバート・グレイ。十八歳にしては落ち着いた佇まいをしている。私でない、他の十八歳と比べても。茶髪で、パッとしない容姿。こいつの邸宅では、洗濯女を何人雇っているんだろう。
「だったら何?」
 冷たく言い放つ。グレイ公は私の態度なんて全く気にしていない素振りで、乾いた笑いを繰り出した。
「いや、本当なんだなって。“ブラッドリー家の子供は歳をとらない”って」
「そんな風に言われてるんだ」
 護衛は任されたけど、道案内は仕事じゃない。だいたい私だって、最近来たばかりだし。案内役の生徒がやってくるまで、私たちは暇を持て余していた。無駄に広い応接室に待機させられて、だからこんな無駄話をしてしまうんだ。
「だいたい護衛なんて必要? 今はアンタが長男というだけで、他にもスペア兄弟はたくさんいるんでしょ?」
 私がそう言うと、グレイ公は眉をひそめた。小さく息を吐いて、机に肘をつく。
「君は、他人の気持ちを考えたことがないの?」
「どうして私が、一般人の気持ちを推し量らないといけないわけ?」
 対抗するように、尊大に足を組んだ。一般人なんてせいぜい、私に媚びへつらうことしかできないくせに。グレイ公はなにか考えるように顎に手を当てて、それから私の目をまっすぐに見た。
「そうだね、君たちはかなり使える道具だから」
「……道具」
 膝の上で手を組んで、自分の爪を何度も弾いた。本当に失礼なやつ。護衛の仕事でもなければ、私がこいつに大怪我を負わせてやったのに。
「だってそうだろ? いい歳して子供の身なりをして、あらゆる仕事をさせられて。お前一人で、他の“一般人”を百人雇うより正確で安全。おまけに給料は五十人分でいいんだから」
 たしかに私が一人いれば、こいつの家の洗濯女は全員解雇され、路頭に迷うだろう。私はそんな安い仕事しないけど。だけどそうやって、うちは発展してきた。魔法の力は、どうしても独占する必要がある。
「アンタさぁ、いい性格してるね」
「君もね」
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