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番外編 なくなってしまった未来①
労働者階級
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「遅かったじゃないか、学校どうだった?」
玄関の扉を開けるとすぐに、兄のノアが私を出迎えた。そそっかしくて、また手を洗うのを忘れている。爪の間に血が溜まっているのがちらりと見えた。蝋燭を節約する必要がない我が家は、どの家よりも常に一定の明るさを保っていた。
ノアも私と同じように成長が止まり、やはり十歳前後の容姿をしている。作業用の貧相な服を着て、血の匂いをさせたまま往来を歩いている。こいつはもう少し、他人様からの目を気にしたほうが良い。
「勉強なんてする必要ない、ってとこ? 本当に私、あんなとこに毎日通わなくちゃならないの?」
「勉強はしたほうがいい、俺も最近勉強してるんだ」
「屠殺場に入り浸ってるやつに言われたくない」
机に置かれたリンゴをそのまま齧った。本当に嫌になっちゃう。私の棘のある言葉に、ノアは短く切りそろえられた黒髪をいじった。彼もその仕事柄、髪を長く伸ばすことができない。
「そんなことより洗濯をしてよ、お湯も沸かして。私疲れちゃった」
「あーはいはい」
家事なんて、魔法でちょちょいと終わるから。使用人なんてほとんどいない。リサは自分のことをハリボテだって言っていたけれど、私はどうだろう。下の兄弟たちはみんな、上の兄弟たちを支える労働者階級に他ならない。いやいや、まさか。私ちは魔法が使えて、崇拝されていて、羨望の眼差しを向けられている。
「なぁ、この喪服みたいなワンピース、洗うの?」
「それは明日も着るんです!」
隣の邸宅では、洗濯女だけで六人も雇っているらしい。一般人というだけで、無駄なコストがかかる。
――私たちは特別なんだ。絶対に。
玄関の扉を開けるとすぐに、兄のノアが私を出迎えた。そそっかしくて、また手を洗うのを忘れている。爪の間に血が溜まっているのがちらりと見えた。蝋燭を節約する必要がない我が家は、どの家よりも常に一定の明るさを保っていた。
ノアも私と同じように成長が止まり、やはり十歳前後の容姿をしている。作業用の貧相な服を着て、血の匂いをさせたまま往来を歩いている。こいつはもう少し、他人様からの目を気にしたほうが良い。
「勉強なんてする必要ない、ってとこ? 本当に私、あんなとこに毎日通わなくちゃならないの?」
「勉強はしたほうがいい、俺も最近勉強してるんだ」
「屠殺場に入り浸ってるやつに言われたくない」
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――私たちは特別なんだ。絶対に。
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