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番外編 なくなってしまった未来①

ノブレス・オブリージュ

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「気をつけてね、最近この辺じゃ、子供の誘拐事件が起きてるっていうから」
「あら、物乞いがいなくなっていいじゃない」
 玄関まで送ってくれるなんて気が利くじゃない。私の返答に、リサの顔が強ばるのがわかった。警戒するように、辺りに視線を走らせる。
「あんまり外でそういうこと、言わないほうがいい」
 巷で起きている、子供の連れ去り事件は、黒ミサ会の連中の仕業だって噂もある。いなくなるのは全員、下々の者たち労働者階級の子供だから、警察ヤードの連中も本気で捜索したりしない。
「私は返り討ちにできるし平気よ」
 黒ミサ会の連中も、そうでない奴らも。かつては魔法の力を手に入れるために、誘拐や殺人を企てる奴らもたくさんいたと聞く。だけど無能な人間になにができる。こっちはちょっと指を鳴らせば鍵をあけられるし、ロープだってほどいて結び直すことができる。
「私たちとあいつらは、生まれたときから違う。リサが一生非嫡出子であるように、私が魔法を使えるように、ストリートチルドレンは一生物乞いをして生きていくの」
「それは、そうだけど……」
 下を向いた。彼女は随分、他人からどう見られるかを気にして生きているようだ。
「あいつら、石鹸も買えないくらい貧乏で、行水して街を出歩いてるのよ。信じられる? 私なら恥ずかしくて死んじゃう」
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