転生したら大好きな乙女ゲームの世界だったけど私は妹ポジでしたので、元気に小姑ムーブを繰り広げます！

1章 幽霊屋敷の謎

原作知識は任せとけ！

「ねぇなに、あの言い方」
「あ？　だって本当のことじゃん」
　アーティは机に座って、いつものように足をぶらぶら揺らしていた。テーブルクロスが泣いてるぞ。椅子を蹴りあげ、倒れそうになる度に人差し指を軽く振って整頓させた。コイツ、掃除だけは得意なんだよね、掃除だけは。
「アンタさぁ」
「なんだよ。あんな無能、いないほうがいいだろ」
「……」
　無表情で、不機嫌そうに鼻を鳴らした。いくらお兄様が、魔法が使えないからってそんなに邪険にすることないのに。
　ブラッドリー家で、モードだけが異質だった。一人だけ金髪で、魔法が使えない。黒い髪は魔法使いの証、この世界でそう言われているのは私たちブラッドリー家の存在があるからだ。長男という理由だけでモードが家を継ぐ。アーティは、それが我慢ならないんだ。……ってなんかのルートで言ってたっけ。
「だから殺すの？」
「え……なに、急に？」
　想像より、ずっと冷たい声が口から飛び出した。アーティがギョッとした様子で私に視線をやる。体調の悪そうな透き通る肌に、黒い瞳、その全てが憎たらしい。彼が頭の中で、あらゆる残酷な殺害方法をいくつも模索していることを確信する。ニッコリ、社交辞令の笑顔を返した。
「いいえ、別に」
　首を横に振って、開けっ放しのドアから部屋を出た。お風呂を炊いて、夕飯を作らなくっちゃ。