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序章

プロローグ

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 若くして死ぬことが、私の人生の目標だった。ろくな人生じゃなかった。
 蝉の鳴き声やお祭りの録音テープの音が、テレビの向こう側から聞こえてくるようだった。片耳が聞こえなくなったのは、単純にストレスのせいだったのかもしれないし、母親の彼氏に殴られたせいだったのかもしれない。
 十九時をすぎると、アパートの廊下や、道端の電柱に明かりが灯り始めた。階段をゆっくり登って、それだけで汗が吹き出た。その日の最高気温は三十九度を記録していた。
 寂れた電灯に、名前もわからないような小さな虫が集まっていた。屋上から見える夕焼けはどこか儚くて、私に安心感を与えた。だからフェンスを乗り越えるときも、まったく怖くなかった。
 水色のアイスを齧った。名前は忘れたけど、当時付き合っていたそこそこ顔の良かった彼氏に貰った当たり棒で交換したものだった。そんなくだらないことだけが印象的だった。
 下のほうで踏切が鳴って、いつもより短い六両編成の青い電車が通った。風が吹いて、熱風かと思えるほど熱かった。溶けた水色のアイスも、棒も、いつも持ち歩いているカミソリも、オーバードーズするための鼻水の薬も、全部重力に従って落下した。
 テレビの向こう側から聞こえていたはずの全ての音が現実となって押し寄せた。ぐちゃ、そんな感じ。不思議と痛みは感じなかった。いや、忘れてしまっただけなのかもしれない。
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