上 下
14 / 42
1章

13話 領主の仕事? ピクニック?

しおりを挟む
「あー暇ぁぁ……ふわぁぁ」

「大きな欠伸をしないでください。仕事中ですよ」

「そんな怒らんといて……」

「では仕事に集中してください」

「いや仕事って……」

机の上には大量の紙……なんてものは無く、俺がさっきまで寝てた証拠となるヨダレが垂れていた。

きったね。

「あの……なんか仕事ないんですか」

「今は特に何も起きてないので、ぐーたら過ごしていいですよ! 領民からも領主が直々に出るような案件はなさそうなので」

うーん、かといってまた寝ようとしたらリーナに怒られるだろうし。

「では領地の外を見て回るのはどうでしょう!? 」

「俺はいいぞ」

「レン様? ただサボりたいだけでは……」

「これはサボりでもなんでもないぞ! 外を視察して危険がないかチェックする。れっきとした仕事だ! 」

「まぁいいですけど、では支度をしてまいります。せっかくのお誘いですしね」 

「やったー! 皆さんでピクニックです! るんるんです! 」

そう言ってリーナとトメリルは領主室から退出した。

俺=領主の仕事。二人=ピクニック。
つまりちゃんと仕事してる俺えらい!

そうだ、せっかくだしトルンとトゥーンも誘ってみよう。

部屋を移動し、トルンの部屋(仮)に行ってドアをノックする。

「おーい俺だけどー」

直ぐにドアが開き、トルンとトゥーンが顔をのぞかせる。

二人とも一緒に居たのか、トゥーンを呼ぶ手間が省けてよかった。

「レン、何か用?」

「ちょっと出かけるんだが、お前らもくるか? トメリルが言うにはピクニックみたいだぞ? 俺は領主の仕事として赴く訳だが」

「いく。待ってて、五分で支度する」

「あはは、ピクニックですか! いいですね!!私も行きたいです! ご迷惑でなければですけど」

「ピクニックに迷惑なんてないぞ。気にせずトルンと支度をしておいてくれ。終わったら玄関に集合してくれな」

「あ、いやピクニックはそうなんですが、あまり大勢で行くと領主としてのお仕事を邪魔しちゃわないかなって……」

そんな真っ直ぐとした気持ちに、後ろめたくなる。 
自分は仕事として、を強調し過ぎてしまった。
ほんとは俺もピクニック気分なんだけどな、わはは。

「仕事がピクニックだ。気にせずに準備をしてくれ」

「へ? 」

「ま、まぁそういう事だから。じゃ」

「ははーそういう事ですか! 私ニブチンでしたね! いつもだらけてるようでだらけてないレン様ですけど、リーナ様の目がある手前、あくまでも俺は仕事として行くアピールってことでしたか!! 」

「バカ!!声がでけぇよ!! 」

「あっ、すいません! 私ったらつい……」

慌てて口をつむったトゥーンちゃん。

まったく……もしリーナがこれ聞いてたらどうすんだよ。ゲンコツ食らうぞ。

「! わ、わたしはぁ……これで一先ず失礼します……ね?  ほ、ほらピクニックですし? おめかししなくっちゃ。トルン様のお手伝いもしますので……すいませんっ!! 後で謝りますからー!! 」

俺の後ろ? を見て焦ったような顔をしているトゥーンちゃんは、早口でそう言うと、物凄いスピードでドアを閉めた。

はて、どうしたんだろうか、と首をかしげた瞬間、足元近くに足元があった?

幽霊、なのかな? 

逆に幽霊であってほしい。いや、幽霊に決まってる。
俺はフラグなんて立ててやいない。

「そうですよ? 幽霊です。ですからこちらを向いてください」

なんてこった、背中の幽霊は俺のメイドさんの声とそっくりだ。

怖くて後ろなんて向けたもんじゃない。後ろ向かなくても背中開眼したら見れるんだけどね。見るの怖いからね。

テ、テレポート。

俺は頭の中でスキルを発動させた。
無事トルンの部屋の前の廊下から、俺の部屋にテレポートできた。

さっきのは幽霊、さっきのは幽霊……。

少し身支度を整えてから、待ち合わせ場所である玄関に向かった。まだ誰も来ておらず、玄関近くの階段に腰掛けて皆が来るのを待っていると、トメリルがやってきた。

「あっレン様! はやいですね」

「んにゃ、はやいっつーても、そろそろ時間だぞ」

トルン達はともかく、リーナが約束の時間ギリギリになるまでやってこないなんて今までただの一度もなかった。

「おめかししてるんですよ! おめかし」

「トゥーンちゃんも言ってたけど、ピクニックくらいでおめかしするもんなのか? しかも本格的なピクニックでもないただの外回りだぞ? 」

「バカですねぇ~。リーナ様の今までの苦労が目に見えて分かります。レン様はこの方面にはからっきしですね」

「何を証拠にドンドコドーン!? 」

「いいですか? 好きな相手とお出かけする時は女の子はおめかしをするんです」

「え、じゃあトメリルも俺の事好きってこと? 」

「ひゃえぇっ!? わ、わわわわわたしはおめかししたい気分だったからしただけです!!! 急にとんでもないこと言わないでください!!!! 」

みるみる顔を赤く染まらせ、ぽかすか叩いてくる。

「ん、おまたせ」

「遅くなってごめんなさい~! 」

なるほど、観察してみると確かに普段とはちょっと違うな。花の髪飾りを二人とも付けていて、初めて見る二人の姿に新鮮な気持ちになる。
なんか双子みたい?

「お待たせしました。って私がビリですか」

「ああ! ぶっちぎりのビリ! 」

言った瞬間、無言でひっぱ叩かれた。
俺ですら捉えられない速度での高速ビンタ。神でも見逃しちゃうね。

「「「「デリカシーがない」」」」

こうしてピクニック……いや、領主としての仕事である外回りが始まったのだった! 俺、不憫!!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎
ファンタジー
昔とある世界で勇者として召喚され、神に近い存在になった男ジン。 新人研修の一環として同胞の先輩から、適当に世界を一つ選んでどんな方法でもいいから救えと言われ、自分の昔行った異世界とは別の世界を選び、勇者四人の選定も行った。 自分もそこで勇者として潜入し、能力を隠しつつ、勇者達にアドバイスなんかを行い後方支援を行い、勇者を育てながら魔王討伐の旅にでていた。 だがある日の事だ。 「お前うるさいし、全然使えないからクビで」 「前に出ないくせに、いちいちうぜぇ」 等と言われ、ショックと同時にムカつきを覚えた。 俺は何をミスった……上手くいってる思ったのは勘違いだったのか…… そんな想いを抱き決別を決意。 だったらこいつらは捨ててるわ。 旅に出て仲間を見つけることを決意。 魔王討伐?一瞬でできるわ。 欲しかった仲間との真の絆を掴む為にまだよく知らない異世界を旅することに。 勇者?そんな奴知らんな。 美女を仲間にして異世界を旅する話です。気が向いたら魔王も倒すし、勇者も報復します。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...