上 下
239 / 1,167
三章『ギア編』

第239話 無限回廊

しおりを挟む


 魔王城に着いた。ブラギリオンは支度を済ませると言って自室に戻って行った。

 俺はレイを連れて(メアは勝手についてくる)。もう一人の旅の護衛であるアリス様の元に向かった。

「今日言われて今日出立なんてありえないわ」
「早いに越したことねぇだろ」
「準備をしっかりしなきゃ足元すくわれるわよ」
「旅支度はレイに任せてある」
「それならもう終わってますよ。ギアは食料、衣類といった、人が必要とするものがいらないので準備が楽でした」
「メンテ用の工具一式は忘れんなよ」
「もちろんです。予備のボディパーツもポラニアが準備してくれているので安心してください」
「いい仕事だ」
「ありがとうございます」

 メアはその様子を見て腕を組んでそっぽを向く。いつも機嫌が悪いよなこいつ。

 魔王城内をしばらく歩く。

 九大天王は部屋や屋敷を魔王城内にいくつか所有しているが、アリス様は魔王に近い場所に住んでいる。それは魔王を守るのが目的だそうだ。

 のはずだが、

「アリス様の部屋はまだつかないのか?」
「いくらなんでも遠すぎますよね」

 一向に着く気配がない。それどころか同じ道を延々と歩いてる気がしてきやがる。

「おいメア、どういう事だ」
「・・・・・・アリス様のスキル『無限回廊』が発動しているわ」
「どういうスキルだ」
「詳しくは分からないけど、同じ道をループさせたりするスキルらしいわ」
「防犯には打って付けだな」

 だから魔王の近くに住んでいるのか。守るのが得意な九大天王ってことか。

「いつも私だけなら、私の魔力を感知してスキルを解いてくださるんだけど」
「おいそれって俺が嫌われているみてぇじゃねぇか」
「嫌われてるかはさておいて、困ったわ。ここから出られなくなったわ」
「何とかならないんですか」
「最悪の場合、餓死するかも」
「ええー、そんなの絶対に嫌ですよ」
「俺は永久機関だから平気だけどな」
「もーなに自分だけ助かろうとしてるんですか、いざとなったら食べますからね」
「歯車なんて食ったら腹壊すぞ、つーか俺だって急いでんだ、ちょっと荒療治だが、魔法を使うぞ」

 俺は右腕を突き出して発射台の構えをとる。

 通路の壁に穴を開けて脱出してやる。こいつは昔の遊園地にあった大迷路の必勝法だ。

「まって!」
「火(ファイヤー)の玉(ボール)」

 メアの制止を振り切って俺は魔法を発動する(ちゃんと威力は抑えてある)。壁に穴が開く。部屋でも通路でもいい、どこかに繋がっているはずだ。

「ああもう! 危ないから穴から離れて!」
「なんだこりゃ」

 壁の穴の先には無限の闇が広がっていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

あなたを、守りたかった

かぜかおる
ファンタジー
アンジェリカは公爵家の娘、隣国の第二王子ローランドと結婚して、この国の王妃になる予定である。 今、公爵家では結婚直前の披露パーティーが行われていた。 しかし、婚約者のローランドが迎えにこない! ひとまずパーティー会場に一人で向かうもののそこにいたのは・・・ スカッとザマァではない 4話目の最後らへんで微グロ注意。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

さよなら 大好きな人

小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。 政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。 彼にふさわしい女性になるために努力するほど。 しかし、アーリアのそんな気持ちは、 ある日、第2王子によって踏み躙られることになる…… ※本編は悲恋です。 ※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。 ※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...