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三章『ギア編』

第225話 悪いのはいつも俺様

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 バリボリと咀嚼音にしては豪快な音を立ててイズクンゾは黄金を飲み込む。

 魔王が解説しだした。

「イズクンゾの魔力の性質は我と似ておる」
「なんの話だ」
「我は暗黒と金色、奴は漆黒と黄金、それぞれ魔力の系統が似ておるのだ」
「だからどうした」
「奴は金を食らう」
「あれマジで食ってんのか」

 ただのパフォーマンスじゃねぇのか。
 食べ終えたイズクンゾが俺たちを見てニヤリと笑った。

「んあ、そうだ、俺様は鉱石、特に金が大好物だ。げぷ。なかなか美味かったぞ」
「わざわざそれ食いにここまで来たのか?」
「んぁ、そろそろ『犬小屋』の鉱石に魔力が染みて旨くなるころだからな。だがしかしウキウキで来てみりゃ、あんなことになってて俺様ビックリしたよホント。気になってトンネルを伝って来てみりゃなんだ俺様の城がツインタワーになってたって話だぜ」

 そうか『犬小屋』を守っていたのはシュチュー、シチューは旧魔王が魔王だった頃に仕えていた四天王の一角。

 ただ居座ってたわけじゃなかったんだな。
 魔王が透き通る声で言った。

「それで、お主はまた戦争をしに来たのか?」

 またってことは常習犯か。

「前にやりあったのは100年前だっけ? 月日が経つのは早いねー、俺様ビックリ。最近ビックリしっぱなしだぜマジで」
「何を企んでおる」
「世界が面白くなる事だ」
「ならば最悪の計画なのだろうな」
「んぁ。そりゃもう最高に飛びっきりのな。げぷ!」
「そうか······」

 会話が途切れて2人の間に静寂が流れる。一触即発か?

 イズクンゾがピクリと動いた瞬間、2つの影が魔王を庇うように立ちふさがる。

「おーおー、九大天王のお出迎えかー、俺様感激ぃー」

 ホネルトンとアリス様はおちゃらけた態度のイズクンゾに対しても一切の隙を見せない。

「俺の部下は居ねぇのか? そういやシュチューのやつが『犬小屋』に居なかったな、どこほっつき歩いてんだ?」

 イズクンゾの質問にも答えずホネルトンが骨を鳴らす。

「イズクンゾ様、どうかお引き取りください」
「なんだよホネルトン君、そう硬いこと言うなよチミ、カルシウム足りてんなっ、ぎゃはは!」

 アリス様がまくし立てた。

「ここはもう貴方の城ではありませんわ。早急に立ち去ることをお勧めします。それとも魔王様と九大天王を相手に何か勝算でもあるのかしら?」
「くけけ、なら聞くけどよ、俺様を倒せんならなぜそうしようとしないんだ? くけけ」
「それは······」
「いいっていいって、俺様が悪かった、悪いのはいつも俺様だからな」

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