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三章『ギア編』

第221話 敗者は全てを奪われる

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「む、ぐぅ」

 医務室のベッドで寝ていたメアが目を覚ます。

「おはよう」
「おはよう······ってギア!?」

 メアは驚いたように後ろに仰け反りベッドから転げ落ちる。何してんだ?

「な、なんであんたがここに······ここはどこ?」

 その様子を見たアリス様が笑いかけた。

「ここは医務室で、貴女は彼に負けたのよ」
「あ、アリス様······、ご、ごめんなさい、負けてしまいました」
「いいのよ。負けたのは悔しいけど、頑張っている我が子を見れて私は嬉しかったわ」
「うぅ······」

 優しい言葉をかけられたメアは呻き声をあげて顔を伏せる。

「寝ぼけてんのか?」
「うっさい」

 キッと俺を睨むメア。だがいつもより眼光が鈍い。治癒魔法で全開しているはずだが、まぁとにかく、

「俺の勝ちだ」
「私の負けね」
「『敗者は全てを奪われる』それが魔王軍のルールなんだってな」
「そうよ」
「メアは今から俺の部下だ」
「もういいわよ、貴方に勝つのは諦めたわ。この3年間、結構頑張ったんだけど、それでも貴方の加速度的に増加する魔力にはぜんぜん追いつかないし、魔鉱山をシチュー様から取り返したみたいな偉業を成し遂げることもできなかった、······工場みたいな施設だって建てられなかったしね」
「け、最初から俺の傘下に加わっていれば、あんな怪しい男につけこまれねぇで済んだんだよ」
「ゲーティーの事? アリス様からもらったおこずかいを全て使ってしまったわ」
「いくらだ」

 この世界の金の価値は理解している(レイから教わった)。
 メアは俺に値段を耳打ちする。

「バッカじゃねぇの」
「う、うるさいわね! それだけ貴方に追い詰められていたのよ!」
「あのな、そんだけの金があればどれだけの事ができたか分かるか? メアがやったことと言えば、魔物を数匹、王国領土内に(ランダムに)送ったのと、巻物(スクロール)でしゃらくせェ真似してきたくらいじゃねぇか」
「······今思えば馬鹿な買い物をしたものね、あの時の私はどうかしていたと思う、そこをゲーティーに見抜かれて、口車に乗せられたのよ」
「あいつセールストークうまそうだもんな」


 とか、雑談もそこそこに魔王の元に戻ろうとした矢先、アリス様が扉を勢いよく引いた。

「うわっ!」
「ポメっ!」
「きゃあ!」

 ずででと部屋になだれ込んできたのレイ、セラ、ポラニアだった。

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