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三章『ギア編』
第172話 謝罪
しおりを挟む「とは言ってもまだ授業の時間には早いんですがね」
「ならほっとけよ、こっちは暇じゃねぇんだ」
「聞きましたよ。昨夜の爆発事件」
ホネルトンの耳にまで届いてやがったか、まぁ九大天王なら当然か。
「それがどうした」
「いえ、火属性魔法の初歩、火(ファイヤー)の玉(ボール)で、そこまでの火力を出せる者は数少ないでしょう」
ここで、ポラニアが俺に耳打ちする。
「そう敵視する必要はないと思うポメよ」
「別に敵視してねぇ、これが普通だ」
「なら変えるべきポメ。ギアは素直に、僕から技術を、ホネルトン様からは魔術を学べばいいポメ」
「なんでポラニアがそんな事を気にするんだよ」
「ギアとウィンウィンの関係を築きたいだけだポメ」
自分に理があるうちは全面的に協力的ってわけか。こういう奴は嫌いじゃねぇ。好感度が振り切れそうだ。
「よし分かった」
「話し合いは終わりましたか?」
「おう、授業に出るぞ」
「やっとその気になってくれましたね、たったの1日でしたが、頭を悩ませたものですよ」
これからもっと悩むことになるだろうがな。
「では、少し早いですが」
俺はホネルトンの言葉を遮った。
「まずは魔王に会いに行く」
「はい?」
「その腕を治す許可をもらいに行くんだよ」
「え? あー、え? どういう風の吹き回しですか」
「あん? ホネルトンの右腕が吹き飛ばされたのは元はと言えば俺のせいだろうが」
「······そういう常識を、貴方が持っていることに私は驚愕を隠しきれませんが······」
「御託はいい、早くセッティングしろ」
「早朝ですし、これから授業もあります、何より謁見の許可をいただかなければなりません」
「じゃあ、いつだ?」
「昨日の無礼の謝罪という形であれば、早ければ今日の昼過ぎには······」
「遅い、が、まぁいい、今回は俺が悪いんだしな。分かった、その段取りでセッティングしてくれ、なんなら俺がやってもいいぞ」
「いえ、私の方でお願いしてみます」
確かに、俺は仕事を終わらせることしか考えていなかった、ここは会社じゃねぇ、まだこの組織をキチンと理解してねぇし、今の俺にゃあ大した役職もねぇ、新人社員、ぺーぺーもいいところだ。
ひとまずは勇者殺しの下準備、万全を期す。
勇者がどの程度のものか分からねぇ以上、急ぐ必要はあるが、焦ってもどうにもなりゃしねぇ。
土台作り、そうだ、土台を積み重ねて、勇者の命をこの手で刈り取ってやる。
気持ちに整理をつけていると、ホネルトンは呼び出した使者に言伝を頼み送り出しているところだった。
「では、教室に向かいましょう、少し早いですが勤勉な君たちなら大丈夫ですよね」
全くだ。
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