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二章『パテ編』

第101話 宝箱1

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 旅に出て10ヶ月が経過した。

 モーちゃんは左の角が折れてしまったが、それ以外は後遺症もなく元気にしている。ただ、急成長したのは治らなかった。スーはこの方が背中で寝やすいからと喜んでいる。

 姿は変わってしまったが、いずれは大人になっていたのだ、俺たちは変えられない事実を前向きに受け入れることにした。

 そして、ジンニン村を出立した俺たちは、現在緊急事態に陥っている。

 道の中心で立ち往生している。前に進むことができない。

「にゃ、にゃあ」

 先頭に立つエリノアがゆっくりと歩を進める。ずりずりとすり足でだ。自分の意思ではないようなエリノアの動きに俺は呼びかけた。

「エリノア戻れ!」
「にゃ、ちょっとだけ、中身(にゃかみ)を確認するだけだよ」
「迂闊。近づくのは危険」
「ジ、ジゼルまで、でもにゃあ、周りに怪しい奴がいないのは調べ済みだよ? 商人か誰かが落としていったに違いにゃいよ!」

 そう、目の前にあるのは1つの箱だ。
 それもド〇クエとか、ゲームでよく見る宝箱のような装飾が施された箱だ。

「バーガー様? 行かないのですか?」
「アイナはスルーか」
「え? 別にこのまま進んでもいいと思いますけど? もし不安なら少し迂回すればいいだけかと」
「甘い!」
「え!? な、なんでですか!」
「宝箱だぞ? 開けないのか?」
「で、でも、落し物ってエリノアが言ってましたよ。落し物なら、落とした人が取りに戻ってくると思います」

 なんていい子だ! やめてくれ! マジレスは俺に効く!

「アイナの言うことも頷ける。素直に迂回して、あの宝箱はスルーしよう」

 がっくりと肩を落としたエリノアを無視して、俺たちは宝箱を避けて先に進む。中身は気になるが仕方ない。

 だがしばらくして。

「またあるにゃ」

 先ほどと同じデザインの宝箱が、同じようにこちらを向いて道の中心に置かれている。

 エリノアは来た道を振り返るが、それなりに歩いているので、さっきの宝箱が見えるわけがない。

「妙。何かおかしい」

 ジゼルが訝しんで宝箱を見ている。
 10m先にある、何の変哲もない宝箱に俺たちは足止めを食らっている。

「まぁ、同じ箱を使ってる商人なんていくらでもいるからにゃ」
「だよな、一応迂回して進もう」
「ラジャー」

 そして、またしばらくして。

「······またか」

 立ちはだかるように宝箱が置いてある。まるで開けろと言わんばかりに。

「さすがに、おかしいよにゃ」
「確実に怪しい。私が箱を焼き払う」
「そんにゃー」

 ジゼルのいうことも確かだ。あの箱は怪しすぎる。

「分かった、ジゼルやってくれ」
「火(ファイヤー)の······」

 ジゼルが詠唱をやてめ、宝箱をまじまじと見つめる。俺も箱を見る。

「箱が少し開いているな」
「ホントだにゃ、最初から開いてたのかにゃ?」
「閉まってた。開くところを見た」

 勝手に開いたって事か。ポルターガイストかな? パラノーマルがアクティビティしちゃったの?

「あれ、バーガー様、宝箱の隙間から何か出てきましたよ」
「あれは」

 俺がそれを何か理解する前に、エリノアが駆け出そうとする。ジゼルがエリノアを後ろから組伏せる。容赦がない。

「痛いにゃ! はにゃすんだ!」
「正気に戻って」
「ぐにゃ! ぐにゃにゃー! はにゃせー!」

 エリノアの様子が変だ。明らかに正常じゃない。あの隙間から出てきたのは草か、まさかあれは、

「またたびか!」
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