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二章『パテ編』
第80話 モノマ村14
しおりを挟む再び村長の部屋に戻った俺は、キッドと村長に挟まれる形でテーブルに乗っている。テーブルの上には地図も広げてある。
スー以外のパーティメンバーには他の仕事を任せてある。これはすなわちリーダー格たちの会議だ。
「して、戦況は如何なものですか?」
口火を切ったのはキッドだ、甲冑を外して軽装になっている。
「この地図を見てくれ、この五つの村の中心付近に魔物村(モンスタービレッジ)がある」
「ほう、魔物が村を作るなど、魔王の支配する大地以外で耳にしたのは初めてです」
「魔王の領土内には魔物の村があるのか?」
「私は若輩者ですので実際に見たわけではありませんが、魔族や魔人と共に一部の魔物も暮らしているそうです」
「なるほど、実に興味深い話だが、それは今度聞こう、俺たちが確認した魔物で1番強いのはAランクの魔物、幻影大鷲(アパリションイーグル)だ。他はCランクの魔物ばかりだが、人の言葉を解し、あまつさえ話す魔物も多い」
「あの怪鳥、幻影大鷲(アパリションイーグル)ですか、私の部下はBランクの魔物とサシで戦える程度には鍛え上げておりますが、搦手(からめて)も多用するAランクとなると、私たちだけでは厳しい戦いになると思います」
そうらしいな、この世界のランクはランク差が激しいようだ。特にAからBにかけてが顕著だろう。Bランクの魔物100頭分の強さをAランクは持っていると考えた方がいいだ 。もちろんそこには相性の問題もあるがな。
BからCなら、Cクラスの魔物が4頭か5頭が、Bクラスの魔物1頭分といったところだろう。
それに同ランクの魔物でも差がある。Bクラスの紫猪(パープルボア)と蜥蜴剣聖(リザードソードマスター)が同じ強さと言われて納得できるはずがない。(あの紫猪(パープルボア)は同種よりも遥かに大きく成長していた特異個体だ。Aランクだったかしれない)
「だよな、だから、あの怪鳥は俺たち勇者パーティに任せてもらおう。魔物村(モンスタービレッジ)から逃げる時に1度手合わせしたが、何とかなりそうだ」
「おお、それならば幻影大鷲(アパリションイーグル)は勇者様たちにお任せます。部隊のほうにも幻影大鷲(アパリションイーグル)を発見し次第、勇者様にお伝えするように伝えておきます」
「頼んだ。それで肝心の魔物の数だが、多く見積もって1500頭だ」
俺のその言葉に村長が異を唱える。
「先日は1000頭と、勇者様は仰っられていましたが······」
「今でもそう思っている、だが敵の勢力は多めに見ておいたほうがいいだろう」
そう、増援、伏兵で苦しめられた経験をここで活かしておかないとな。
「いい心がけです。まだ12歳とお聞きしておりましたが、すでにそこまで考えているとは感服の極み」
「数回死線を潜っただけのことさ。で、いけそうか?」
「どうでしょうか。数は多いですが、幻影大鷲(アパリションイーグル)を除けばCランクの魔物ばかりなので、500頭くらいはいけるかと」
「殲滅は無理と?」
「力及ばず、すみません」
「ふむ、兵の数は?」
「私含めて92名です。遊撃部隊なもので少人数なのです」
「それで500頭いけるのか」
「意地でも倒しますよ」
「分かった、殲滅は無理だとしても敵の戦力を半減できれば脅威度も下がるだろ」
「幻影大鷲(アパリションイーグル)さえ倒せば、あとは何度かアタックを仕掛けて潰せます」
「んじゃ、目標は幻影大鷲(アパリションイーグル)だ。飛ばれて逃げられたら厄介だな。何か策はあるか」
「いえ、弓がありますが、飛んでいる鳥に当てることができるほど弓の腕を持つ者はおりません」
「降りてきた時を狙うしかないってことか、チャンスは限られているな」
俺たちが話し込んでいると、スーがベランダから戻ってきた。俺をじーっと見つめている。ああ、わかってる。言いますよ。
「勇者様、そちらの方は?」
「ああ、スーといって俺たち勇者パーティのメンバーだ」
「おお、そうでしたか、私は王国聖騎士団、燃(レッド)え盛る真(フレイム)っ赤な炎(バーニング)部隊、 隊長キッド・ジュニア・ボーイです」
「ぼくはスーなの、モーちゃんは殺さないでほしいの」
「モーちゃん、といいますと?」
「ああ、俺たちは斧牛(アックスブル)の子牛を飼っててな。魔物村(モンスタービレッジ)に置き去りにしてきてしまったんだ」
「なるほど、分かりました、斧牛(アックスブル)には手を出さないように部下たちに伝えておきます」
「よろしく頼むよ」
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