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二章『パテ編』
第79話 モノマ村13
しおりを挟むアイナがブートキャンプを開いている広場はさらに人が増えていた。
男衆は端に寄って、馬に乗った一団がキビキビとした動きで配列を作っていく。アイナは高台に立ったまま、その様子を見ている。俺に気づくと、高台から飛び降りて近づいてきた。
「バーガー様、聖騎士たちが来ました!」
「そうみたいだな、要件は聞いたか?」
「いえ、とりあえず村人に村長を呼びに行ってもらいました」
少し遅れて村長が到着した。決して歩いてきたわけでない、俺が速かったのだ。
聖騎士たちの先頭にいる全身を赤く塗られたプレートアーマーの男が馬から降りて、こちらに駆け寄ってくる。
「貴方がこの村の村長ですか?」
甲を外して脇に挟んだ男は、精悍な顔つきをした30代くらいのおっさんだ。髪は炎のように赤く顔が濃いタイプのイケメンだ。
「はい、私が村長です」
「私は王国聖騎士団、燃(レッド)え盛る真(フレイム)っ赤な炎(バーニング)部隊隊長、キッド・ジュニア・ボーイです!」
部隊名カッコいいのに、あんたの名前で台無しだよ。どんだけ子供なんだよ。
「名前へんですよね? でもベイビーが付いていないからセーフなんですよ、ははは」
「ははは」
なに村長までわろとんねん。
「我々がコンダイ村にいたところ、ここ、ジンニン村より伝令を受けて馳せ参じた次第ですが、勇者様がいらっしゃるとはまことですか?」
「俺が勇者だ」
「おおおお、本当にハンバーガーだ。こ、こほん、これは失礼いたしました!」
「気にするな、みんな最初は同じ反応をする。俺は勇者、バーガー・グリルガードだ。ここに来たということは俺に協力してくれるということか?」
「無論です! 我々は村々を周り、魔物を駆逐するのが役目の炎の遊撃部隊です。伝説に残るであろう勇者様と共に戦えるなんて夢のようですよ!」
「それはよかった、それじゃキッド、部隊の規模と」
「ちょっと待った」
俺たちの話を遮って、ジゼルとエリノアが現れた。ジゼルは険しい顔でマイクをキッドに向ける。
「王国魔導師のジゼル・ダグラスさん!」
「フリーズ。キッド・ジュニア・ボーイ、貴方と貴方の部隊に看破(ファゾム)を掛ける」
「え? 私たちにですか? 分かりましたやってください」
「できるだけまとめて掛けたいから、一塊になって」
「了解です。よし、お前たち集まれ!」
ジゼルはキッドの号令で固まった騎士たちに看破(ファゾム)を掛けて回る。ややあって額に汗をかいたジゼルが一周して戻ってきた。魔物村(モンスタービレッジ)から逃げ出した時よりかは消耗していないが、短時間で何十発も魔法を使ったのだ、多少は疲れるだろう。
「バーガー大丈夫、この中に魔物はいない」
「ジゼル、ありがとう、素直に信用していたぜ」
「疑念を抱くのは私の仕事、少し休む」
ジゼルはエリノアを連れて宿に戻っていく、途中で振り返りキッドに目線を向ける。
「疑って悪かった。詳しい話はバーガーから」
「容疑を晴らしていただき感謝します!」
こういうことで後腐れがないのは、男らしいジゼルの性格のお陰だろうな。どうやら階級も魔導師であるジゼルの方が上のようだし、これから共闘する、命を預け合う仲間との間に波風は立てたくないからな。
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