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二章『パテ編』
第77話 モノマ村11
しおりを挟むエリノアはすぐに見つかった、たまたま居合わせた行商人と話し込んでいる。
「そうは言ってもな」
「そこをにゃんとか」
「何を話しているんだ?」
「げ、バーガー」
おやおやぁ? また隠れていけないことしてるのかなぁ?
「これは勇者様」
「お困りですか?」
「いえ、この娘が魔物の素材を譲って欲しいと······」
「いくらで?」
「タダで······我々も商売ですので、無償はちょっと」
「エリノア、なにふっかけてるんだよ、金ならあるだろ?」
「へへへ、あるっけ? あったっけかにゃあ?」
こいつ、値切ってたのか、いや、タダで寄越せとか値切るってレベルじゃねぇぞ。
「でもにゃ、バーガー、見てみろ、いい具材があるにゃ」
「どれぇ?」
俺は身を乗り出して、風呂敷の上にある並べられた素材を見る。見たことのないものがいくつかある。
「これは?」
「こちらは鋼鉄陸亀(スチールトータス)の甲羅の欠片です」
「にゃはは、バーガーも具材は欲しいよにゃ?」
「だからってな、金はあるんだから買っちゃえよ、なにも値切ることはないだろ」
「はぁ、これだからトーシローは、8ヶ月もミーの側にいてそんな言葉が出てくるにゃんて、商人失格だよ?」
「いやいや俺商人じゃないし、勇者ですから、ほら、俺の金あったろ? 大喧嘩祭の時の賞金、あれで買っちまおう」
「金の持ち主がそれでいいにゃらいいけど、じゃあ主人色々買うから色つけてね」
「はいはい、わかったよ、少しだけな」
俺が買ったのは、
鋼鉄陸亀(スチールトータス)の甲羅の破片。
殺人蜂(キラービー)の毒針。
鏡鳥(ミラーバード)の鏡羽。
どれもAクラスの魔物だ。
ふむ、なかなか渋い品揃えだ。少々高かったが、まぁ大したことないさ。さて挟むか。俺は具材を咥えて解析を開始する。俺の脳内に女神の録音ボイスが響く。
『鋼鉄陸亀(スチールトータス)から鋼鉄(ボディオブ)の体(スチール)を検出、1回使用可能』
『殺人蜂(キラービー)から毒針(ポイズンニードル)を検出、1回使用可能』
『鏡鳥(ミラーバード)から鏡(ミラー)の盾(シールド)を検出、1回使用可能』
ルフレオ図鑑によれば、鋼鉄(ボディオブ)の体(スチール)は硬化(ハードニング)の上位互換だったな。硬化(ハードニング)でも硬かったからな、これは楽しみだ。
毒針(ポイズンニードル)か、先端から毒の出る針を魔力生成する魔法だったな。短剣と同じ要領で使えればいいが、仲間に当てないようにしないとな。ジゼルが解毒(デトックス)を使えるとはいえ、フレンドリーファイヤーは避けるべきだ。
鏡(ミラー)の肩(シールド)、鏡の性質を持つ盾を魔力生成する魔法だな。緊急時の障壁に使えそうだ。
あとは、薬草と体力増量効果のあるパテを挟めば、中堅勇者バーガーになれるだろう。いい具材(メニュー)だ。
「エリノアはなんか買わないのか? 奢ってやろうか?」
「マジか、じゃあ、そうだにゃあ、投げナイフでも見繕ってもらおうかにゃ」
「投げナイフか、いつもは使ってないよな」
「今回みたいに敵が多い時は重宝するからにゃ、いつもは軽量化のために軽装を心がけているんだけど、飛び道具はあったほうがいいからにゃ」
「何本にしますか?」
「それだけ薄ければ、あるだけ装備できそうだにゃ、全部もらうよ」
「おい」
「ミーは高くつくよ、勇者」
「あー、はいはい、まぁナイフだし大した値段しないだろ。
いつも前衛、ご苦労さま」
「太っ腹だにゃー!」
そのあと、ジゼルの伝言をエリノアに伝え、俺は村長のもとへ向かった。
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