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二章『パテ編』

第64話 大喧嘩祭11

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「脅しではありませんよ?」
「やってみろって言っているんだ、やれよ。やってからぶっ飛ばしてやる。やらないなら今すぐぶっ飛ばしてやる」

 俺は跳ねずに這ってカルボに近づく。何故かって? 跳ねるより威圧感のある移動方法だからだ。その甲斐あってかカルボを試合場の端に追い詰めことに成功した。

「チッ、話のわからねぇ馬鹿だ、勇者ってのは皆そうなのか」
「馬鹿じゃないバーガーだ」
「これはブラフじゃない、やると言ったらやるぜ。見てろよ仲間が弾け飛ぶ瞬間を、遠隔爆弾(リモートボム)」

 カルボの呪文と同時に、スーの持つ犬型の風船が爆発した。スーの上半身が吹き飛んで鮮血が飛び散る。

 煙で死体が見えないが、アイナが慌てて駆け寄っている。後で謝らないとな。

「くくく、愚かだな勇者、愚者にでも名前を変えればいい」
「それはどうかな」
「なにぃ?」
「うぅ、びっくりしたのー!」
「!?」

 スーは瞬く間に再生して元に戻っている。煙に隠れて上手く再生してくれた、これなら不滅龍だとバレることはないだろう。

「どうやった? 抵抗(レジスト)はできていないはずだ!」
「教えられないな」
「舐めやがって」

 カルボは奇術師(マジシャン)のように、どこからともなく新しい杖を取り出すと柄の部分を引き抜く、仕込み刀だ。その刀で本体である俺を狙う。そうだな、俺を刺せば意識が飛びカルボの勝ちになるだろう。

 俺に刀の切っ先が届き少し削れる。内部の魔法陣に伝わる前にハンバーガーの魔人が刃の部分を掴んで止めてくれた。カルボはビクともしなくなった刀から手を離す。体の土埃を払って紳士然とした態度に戻る。

「今回は私の負けのようです」
「そうだな、今回ばかりは相手が悪かっただけの話しだ。さ、歯を食いしばれ」
「残念ですが、小銭稼ぎは諦めます。まさか勇者と当たるとは私もつくづくツイてない。ここらで退散させていただきます」
「む、逃げる気か! 待て!」

 カルボは手から玉を出現させる。その玉を床に叩きつけると煙が立ち込める、煙玉だ。煙は瞬く間に広まる。俺は自身の身をハンバーガーの魔人で守らせることしかできなかった。

 煙が晴れるころには、カルボの姿は影も形も残ってはいなかった。

 俺は魂(マテリア)の実体化(ライズソウル)を解除する。ハンバーガーの魔人は煙のように消える。

「ゲホゲホ! えー! カルボ選手の敵前逃亡により! 勝者バーガー選手ぅううう!」

 歓声が湧き上がるが、俺は釈然としない気持ちを切り替えて表彰台に登る。何はともあれ俺たちの勝利だ。

「優勝者のバーガー・グリルガード選手には! 優勝賞品の金貨1枚と副賞の斧牛(アックスブル)を贈呈します! スタッフゥー! 連れてきてくださいぃいいい!」

 きたきたぉー! 俺の牛ちゃん! これで俺の溜飲も下がるってもんだ! 今夜は皆で牛ちゃん祭りだな。1頭丸々だから酒場を貸し切って盛大に騒ごう。ぐへへ、早く挟みたいぜ。

「来ました! どうぞお連れ帰り下さい斧牛(アックスブル)です!」
「よ! 待ってまし??????た」
「ブモ?」

 現れたのは子牛だった。それもめちゃめちゃ可愛い子牛。

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