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六章『ピクルス編』
第1150話 剣一本
しおりを挟む何時からだろう、この世界に敵がいないと気付いたのは、世界を制覇できると、誰でも思うように如何様にも殺せると気付いたのはいつからだろう、長い長い勝利の歴史、怠惰の日々、悠久の時をここで過ごしてきた。
退屈していた。
これこそが最大の敵なのだと思わせるほどに、退屈していた。最強になっても叶わない夢、いや、最強だからこそこの夢だけは叶わない。
あぁ、死合いたい。
殺されるかもしれないし、殺せるかもしれない、そういう五分の勝負、一つのミスが永遠の後悔に変わるような、それは太陽光で、その日のコンディションで、気持ちで、他者によって、流れる汗一滴で、遥か彼方で蝶が飛んだ程度のほんの些細なことで勝敗が左右されるような、贅沢を言うならば勝てる見込みが低い方がいい、そこまでの贅は望まない。
敗北なんて万に一つすらない戦いの日々、万に一つと言えど当たりのないテキ屋のようなイカサマな日々だ。
あぁ退屈だ、永遠の牢獄だ。誰か救ってくれ、この最強を、最強たらしめる因果を打ち砕いてくれ。
生きているという感覚を取り戻させてくれ。
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