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六章『ピクルス編』
第1149話 最優の神様
しおりを挟む「そうなのスーなの」
スーは悲しそうな顔をしている。
「なぜ出てこれたぁ? 完全に取り込んだはずだ」
「スーはスーなの、イズクンゾに僕を押さえつける力は残ってないの」
イズクンゾは歯噛みする、ギリギリと、ギリギリギリギリと、羨ましそうに。女神がいつの間にか持っていたスリッパで引っぱたいた。
「ぎゃあッ!」
「五月蝿いぞ、殺虫スプレーどこいったかのー?」
「やめるの!」
「あー? なんじゃスーよ、いつから余に命令できるほど偉くなったんじゃ?」
「命令なんかしてないの、ただ可哀想なの」
「ふうん、可哀想、こやつがか?」
「そうなの、イズクンゾはすごく可哀想なの」
「その顔、なーんかもの悲しげな顔じゃ、意味深顔じゃ、ムカつく、スーよ、ここまでの未来を見ていたじゃろ」
「なに?!」
「虫は黙っとれ、こやつを哀れんでいた、ずっと回避する方法を模索していた、そうじゃな?」
「そうなの、イズクンゾはバーガーに負けるの、全部欲しいのに最後は全部奪われちゃうの、止めても止めても、いくら考えても、どの未来でもイズクンゾは諦めずに進み続けるの」
「宿命じゃ、本来この領域に来れるものは余が呼んだものか、貴様くらいじゃ。それ以外は勝手に入ってくる侵入者じゃ、まぁそれも数えるほどしかおらんがの、随分と難儀するらしいからな、ふふん。そして招かれざる虫は総じて余に潰される運命を背負っておる」
「許してあげて欲しいの!」
「なぜじゃ? 意味がわからぬな、可哀想だからといって、こやつは貴様に酷いことをするばかりか、大切なものも奪ってきたじゃろ」
「……そうなの、たくさん痛いことされたし、たくさん奪われたの、でも最後はここでこうなるってわかってたの、……うぅ、わかんないの! かわいそうなの! 弱いものいじめはダメなの!」
「俺様が……弱い……だとぉ?」
「そうなのイズクンゾは弱いの! すっごく弱いの、情けないの、雑魚なの、笑い方がキモいの、弱すぎるから他から奪って、奪って、それでも弱いから奪い続けて、奪う相手がいなくなれば弱いとか無くなるからって、ずっと、ずっと、どこまで行っても孤独で、だから不安だったの」
「何を変わった口を! 俺様がそんな惨めったらしい感情でここまで来たと言うのかよぉ!」
「そうなの、それだけで来ちゃったの、イズクンゾはここで散る気だったの、ぼく自殺(スーサイド)だからわかるの、イズクンゾは死に場所を求めていたの、自分の性に逆らえないほど弱いから、ならこの性を粉々に粉砕してくれる絶対強者に踏み躙られたかったの、最強(めがみ)に負ければ強いか弱いか、有耶無耶になるから」
「なにを……バカなこと」
「イズクンゾの夢は絶対に叶わないの、どんなに頑張ってもそれだけは叶わないの、知ってるはずなの、でも諦められなかったの、それがイスクンゾだから、叶えるまで満足出来ないの、この強欲の悪魔!」
イズクンゾの身体から力が抜けていく、女神が笑った。
「ぷぷぷー! バーガーサイドの行く末を憂いあんな顔をしとったと思っとたったが、まさかこんな糸くずに同情していたとはな! この糸くずが一番バカにしていたのはスーなのにのぉ! ぷははははははは!! ぐぷぷ! 弱い弱い言われてやんの! 見下してた相手に情けを掛けられる気分はどうじゃー?」
「笑っちゃダメなの、誰でも間違いは犯すの、そしてまだ取り返しがつくの」
スーは胸に手を当てた、光があふれだす、イズクンゾが奪ってきた生命の塊だ。
「それは俺様のーー」
「ううん、違うの、これはイズクンゾのものじゃないの、なんでも自分のって言っちゃダメなの、それぞれがそれぞれのものなの、こんなこと言っても性は変えられないってわかってるの、でもそれで僕が言わない理由にはならないの」
女神は呆れたように言った。
「ほんとどこまでも甘いやつじゃなぁ、羊羹のように甘い、ほれ」
女神はイスクンゾをスーに投げ渡した、スーは目を見開いた、初めて予想外のことが起きたと言わんばかりだ。
「いいの!?」
「ふ、貴様の完璧な未来予知なんぞ、余の前ではいとも簡単に変えることができる、ということを何となく見せつけてやりたかっただけじゃ」
「ありがとうなの!」
「さっさと行くがよい、余の気分が変わらぬうちにな、宇宙も元に戻るぞ」
「うん! またね! ○○○!!」
「あー、そこ編集じゃ、丸3つじゃ」
「なんのことなの?」
「貴様には関係ないことじゃ、ほれいけ」
女神が指を鳴らすと、スーとイズクンゾは光に包まれて消えた。
「あとはあいつがどうなるか、じゃな」
誰もいなくなったのを確認してから布を被せて隠してあったテレビを出して電源を付けた。
「クライマックスじゃ」
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