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六章『ピクルス編』
第1069話 純悪の魔獣36
しおりを挟むグレイブは空中に魔力を固めてシチューと同じ高さまで上がった。
「今度はどんな芸を見せてくれるんだ?人間」
「これならどうだ!」
シチューは首を傾げる。
グレイブが手を合わせる。その様子を見たシチューは怪訝そうな顔をした後にハッとする。
「それは、まさか消滅魔法(ディスアピアランスマジック)か!」
「この魔法に対して耐性なんてものは無意味!」
放たれた光がシチューを襲う。
「スカリーチェほどの広範囲とはいかんが、貴様を消すくらいなら十分だ」
この魔法は消滅という名前だが無我の境地から来るものではない、むしろその逆で感情の豊かさ、思いの『差』に起因する。スカリーチェの場合はイズクンゾへの悪愛とその他の差から生まれた魔法だ、ゆえにあの威力となる。
グレイブも感情の豊富さでは負けていない、王国民に対する守るという思いとそれらを犯す者たちに向けられる怒りがこの魔法に至った要因なのだ。
この磔台から抜け出すのは可能だが時間が掛かる。そういう作りにらなっていた、殺すためではなく動きの阻害、正しく磔にして行動を封じる用途そのものだったのだ。
シチューはそれをもろに喰らう形になった。
消滅魔法(ディスアピアランスマジック)は対象を完全に消失させる。質量など無視して消してくるのだ。
消えていくシチューの顔は歪んでいた。
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