上 下
989 / 1,167
六章『ピクルス編』

第987話 認識する悪魔

しおりを挟む

「まっず! なんだこれっ!!! げええええおろろろろろろろろ!!!! ぎゃああああああーーーーー!!!!!」

 イズクンゾが悲鳴をあげてのたうち回っている。
 その間に齧られた部分の修復が終わる。

 またとないチャンスだ……でもーー

「まず、かったのか、俺」

 ショックで動けない。俺の中に眠るもう一個のハンバーガーがショックを受けている。

 『不味い』その言葉は料理にとって一番聞きたくない言葉だ。
 向こうもピンチだが、こっちもピンチなんだ。

 そう言えばアイナ(赤ちゃんの時)が食べた時も腹を壊していたな……付着していた土埃のせいだろうと内心そう納得していた……けど、今はそれなりに身なりには気をつけていた……

 ーーそうか俺は不味いんだなーー

 涙が頬を伝う。
 魔王が苦しみ藻掻く。

「何してんだ、バーガー」

 ギアの声にハッとする。

「てめぇ、仕事中に何をボーッとしてやがる」

 そ、そうだ、俺はやらなければ……ならない!

「そうだ、俺はまだ具材を挟んだ時に食べられていない! ちゃんと下拵えもしていない!皿に乗った状態でもう一度望めばいい!しかし俺を食べるのはお前じゃない!」

 魔王がピタリと動きを止めた。
 不自然な体勢だが、全身が筋肉の役割を果たす漆黒線状魔力で出来ているため不思議ではない。

「あーーーーーー『見えた』」
「は?」
「そうか『そこ』にいたのか。違和感の正体はこれだったのか」

 いつものイズクンゾじゃない。
 なんだどうした?

「番重岳人」
「な!?」

 なぜ俺のリアルネームを!?

「その魔法陣、バンズの中にある魔法陣だよ、それよぉ、それこそが『あいつ』への糸口だったんだなぁ」

 ……嘘だろ。

「『女神』さ。俺様がいるのではと考えていた存在だ。よもや、よもや、いるのか。そこに、マジか」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

あなたを、守りたかった

かぜかおる
ファンタジー
アンジェリカは公爵家の娘、隣国の第二王子ローランドと結婚して、この国の王妃になる予定である。 今、公爵家では結婚直前の披露パーティーが行われていた。 しかし、婚約者のローランドが迎えにこない! ひとまずパーティー会場に一人で向かうもののそこにいたのは・・・ スカッとザマァではない 4話目の最後らへんで微グロ注意。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

処理中です...