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六章『ピクルス編』
第918話 胎動
しおりを挟む時は遡ること100年ちょっと前っス。私は魔界にある人間の集落で生まれたっス。
なんで魔界に人の集落が? って思うっスか? 魔界なんて大層な名前っスけど別に元から人はいたっス、王国に魔物がいるのと同じっス。え、知ってるってまあいいじゃないスか。
人間は隠れ里をいくつも持っていて。その中の一つの村に生まれたってわけっス。村名は言いませんよ、もうない村のことを言っても仕方ないっスから。
私は生まれた時から尋常じゃない魔力量を持っていたっス。それとこんな髪色だったんで呪いの子として檻に入れられたっス。
貧しい村でしたが、まだ家畜の方がいい扱いを受けていたっスね。
檻の中で泥を啜り。ボコボコにされ、慰みものにされ。酷い仕打ちを受けたっス。
それでもそれが私の普通でしたから、受け入れていたっス。世界はこんなものだと。
そしてその日は来たっス。
何年ぶりに檻から出されて、森の奥に連れて行かれたっス。
理由は簡単で魔物の生贄っスね。あんなに忌み子と嫌っていたのに何故殺さないのかと気にはなっていたんスけど、そのとき理解したっスね。私は魔力量が多くて魔物の餌には丁度よかったんス。
森の奥のさらに奥にある大きな湖(と言うより沼っス)に着くと。小舟に乗せられて湖の中心にある小島に置き去りにされたっス。
3日くらいすると、湖の底から大きな虫の魔物が出てきたっス。餓死寸前だったんで簡単に触手に捕まったっス。湖の中にある洞窟に連れていかれて、そこで散々弄ばれたっスねぇ。魔物ってのは人間をいたぶるのが好きなんスよ。人間がするそれとは違って扱いなんて知らないから酷かったっスよ。泣いても騒いでも無駄で、クスクス。最後は泣く力もなく無言で、クスクス。早く殺してって頼んでも絶対に殺してくれなかったっス。
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