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六章『ピクルス編』

第914話 四天王戦 VSスカリーチェ

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 爆走だ。俺たちは来た通路を全力疾走で駆け戻っている。全力撤退だ。

 まさかこんな事態になるとはな。
 味方が支配されて敵になるなんて戦いにくいったらない。

 どうするか。このまま中央に行くのはいいが、そこでスカリーチェと対峙してどうする。

 しかし、あのままあそこにいるのはマズいのは確かだった、ううむ、皆と合流して全軍撤退も視野に入れておくか。

「待やがれです!」

 アヴドキアが飛んで並走してきた。

「にゃおら!」
「ちぃ!!」

 すかさずエリノアが間に入る。鞭と剣で鍔迫り合いをして壁に叩きつけた。

「ぐぅ! 馬鹿力め!」

 しかし力んだせいでエリノアの傷口から血が吹き出した。

「にゃ!!」

 ジゼルがエリノアに手を向ける。治癒魔法を掛けるつもりだ。

 それをエリノアは拒否した。

「いま回復しちゃったら、ミーのスキルが解除されちゃう」
「……わかってる」
「大丈夫だよ、ミーはまだ戦える」
「急ぐぞ!!」




 中央に着く。







「く、やはりか」

 中央部分が消失していた。
 底を見る。底が見えない。

 中心部に浮いている人影があった。距離はあるが誰かは分かった。

「スカリーチェ!!」
「おんや、クスクス。なんでまだ存在してるんスか?」

 スカリーチェは張り付いた笑顔を崩さずに言う。
 何か手に持っている。槍?

「神様はどうした!」
「ポセイドンなら結界ごと消滅させたっスよ」

 アヴドキアが怒鳴る。

「何してやがりますか! あの神はお父様の供物って話じゃねぇですか!?」
「スーの力を得たイズクンゾ様なら死んだ神の力すら使えるっス。でもまぁ私に消される程度の神なんて、今更もう必要ないっス。イズクンゾ様はもうそういう次元にいないっス」
「じゃあなんでスカリーチェはヤーたちにこの任務を頼みやがりましたか!?」
「クスクス。決まってるじゃないっスか」

 スカリーチェの細目が薄らと開いた。

「イズクンゾ様に愛されるのは私だけがいいっス」
「とち狂いやがりましたね……」
「狂えもしない愛なんて、惰弱過ぎるっスよ。まして血が繋がってる程度でデカい顔されると腹が立つっス。いまイズクンゾ様は必死に戦っておられまスから、ここまで目が届かない、消すなら今がチャンスっス」

 理解は出来ないが状況は飲み込めた。
 スカリーチェはイズクンゾが好きで、イズクンゾの愛を独占するためにイズクンゾの子供を殺そうとしているのか!

「ああ、お腹の傷が疼きます。あの時みたいに、腹にいるうちに殺しておけばよかったっス」
「それってまさか」
「そのMAXソードで腹を貫いたのは、剣を封印するためと……」

 邪悪な笑顔が軋み出す。

「イズクンゾ様の子供を殺すためでもありましたから。クスクスクスクスクスクスクスクス」

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