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五章『チーズ編』
第835話 現世3
しおりを挟む朝だ。目覚める。俺は真っ先に自分の体を確認する。
ぺたぺたぺた。よし!
夢じゃなかった。本当に俺の体だ!
女神は最低なやつだったけど、こうして戻してくれたんだ。結果よければ全てよしだ!
「……はは」
そうさ、俺は戻れたんだ。ハンバーガーの体になって今ある環境の大切さがよくわかった。身にしみた。五体満足でうまい飯が食える。筋トレもできる。これは最高のことなんだ。
「……」
でもなんでだ。まったく気分が晴れない。
くそ、
前向きに考えようとしてもやっぱりダメだ。アイナに会いたい。今頃俺が死んだと思って悲しんでいるに決まっている。もしかしたら暴走しているかもしれない。
ジゼルだってエリノアに裏切られて一番ショックを受けている。
エリノアもきっと……
スーもなんとか助けてやらないと。
俺はいてもたってもいられなくなり部屋を飛び出す。
こういう時にパソコンにかじりついててもいい事なんて何一つない。
部屋から出ても俺はまったく平気だ。異世界で暮らしたからパソコン離れは出来たようだ。いいことか悪いことかは判断できないがこうして行動の選択肢が増えたのはいい事に違いない。
人目も気にせず半裸で街を見おろせる丘まで駆け上がる。常人の目で見える速さで動いてないから大丈夫だ。
「俺はどうすればいいんだ」
女神に強制的に連れてこられた異世界だった。
現代に固執していなかったから受け入れた。
馴染んでたんだ、あの世界に、
あの世界は俺を受け入れてくれた。
肉体無しの精神面だけで俺を見てくれたんだ。
仲良くなれた。負けたけど、
死んでそれで、
それをまた女神の気分で現世に帰された。
「心残りがあの世界にある」
俺はアイナに会いたいんだ。
……こっちの世界じゃ誰にも相手にされないしな。寂しがり屋だったんだな、俺。
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