上 下
713 / 1,167
五章『チーズ編』

第713話 静寂なる時の中で2

しおりを挟む

 私とアイナだけでも連携は取れる。アイナが前衛で私が後衛だ。

 アリスは私たちの準備が終わるのを待っている。強者の余裕というものだろう。こちらの陣形が整うと手を叩きスキルを発動させた。

「そろそろ始めましょう。『黒舞踏会』」

 アリスの服が黒く染まる。服に高密度の糸状魔力を縫い込ませている。ドレスが絹よりもしなやかで鎧よりも頑丈な防具に様変わりする。

 両手にはそれぞれ漆黒鉄線が魔力生成される。

 昔見た時は魔力が上昇したことしかわからなかった。今ならどうなっているかがよくわかる。私は自分の成長を実感する。私はアイナに強化魔法を掛けた。

「君(グッド)に幸(スピード)あれ」

 アイナの体が数秒光る。

「これは・・・・・・」
「サイコン村でバーガーに掛けたものと同じ全能力上昇魔法」
「力が漲りますっ!!」

 そのままの勢いでアイナは弓を構える。そして迷いなく射る。
 全部で6本。正面に2本、左右に2本ずつだ。横に射った矢もアリスに向かって起動を変える。魔法矢(マジックアロー)だ。

 射終わると同時にアイナは武器を細剣に切り替えて走り出す。

「ちょこざいですわね」

 アリスは舞うように鉄扇で矢を弾く。
 アイナが細剣を突き出す。

「ふっ!」

 鉄扇をクロスさせて受ける。金属どうしが衝突する音が響く。火花が散る。

 私の番だ。

「再利用念動力(リサイクルキネシス)」

 魔力で弾かれた矢を浮かせて再発射する。

 アリスは鍔迫り合いをやめて跳躍回避する。
 アイナは相手との距離を取ったとたんに弓に切り替えて矢を番え射る。その数5本。

 アリスは空中にいながらも体を回転させながら鉄扇で弾く。

 アイナが着地地点目掛けてさらに矢を射る。

 それすら弾いたアリスは無傷で着地する。

 しかし二人のコンビネーションによって発生した僅かな着地の隙をアイナは見逃さない。

「はぁっ!!」

 細剣の鋭い突き。鉄扇を弾き飛ばした。
 鉄扇はカラカラと地面をスライド。消滅する。

「ふうん。中々のコンビネーションね。勇者パーティが全員揃っていたら危なかったかもしれないわね」

 そう言いつつ。鉄扇を魔力生成して補充する。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

あなたを、守りたかった

かぜかおる
ファンタジー
アンジェリカは公爵家の娘、隣国の第二王子ローランドと結婚して、この国の王妃になる予定である。 今、公爵家では結婚直前の披露パーティーが行われていた。 しかし、婚約者のローランドが迎えにこない! ひとまずパーティー会場に一人で向かうもののそこにいたのは・・・ スカッとザマァではない 4話目の最後らへんで微グロ注意。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ
ファンタジー
高校生の時に異世界に召喚された主人公――四河日門。文化レベルが低過ぎる異世界に我慢ならず、元の世界へと戻ってきたのはいいのだが、地球は自分が知っている世界とはかけ離れた環境へと変貌していた。文明は崩壊し、人々はゾンビとなり世界は終末を迎えてしまっていたのだ。大きなショックを受ける日門だが、それでも持ち前のポジティブさを発揮し、せっかくだからと終末世界を異世界アイテムなどを使ってのんびり暮らすことにしたのである。

さよなら 大好きな人

小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。 政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。 彼にふさわしい女性になるために努力するほど。 しかし、アーリアのそんな気持ちは、 ある日、第2王子によって踏み躙られることになる…… ※本編は悲恋です。 ※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。 ※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。

処理中です...