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五章『チーズ編』
第713話 静寂なる時の中で2
しおりを挟む私とアイナだけでも連携は取れる。アイナが前衛で私が後衛だ。
アリスは私たちの準備が終わるのを待っている。強者の余裕というものだろう。こちらの陣形が整うと手を叩きスキルを発動させた。
「そろそろ始めましょう。『黒舞踏会』」
アリスの服が黒く染まる。服に高密度の糸状魔力を縫い込ませている。ドレスが絹よりもしなやかで鎧よりも頑丈な防具に様変わりする。
両手にはそれぞれ漆黒鉄線が魔力生成される。
昔見た時は魔力が上昇したことしかわからなかった。今ならどうなっているかがよくわかる。私は自分の成長を実感する。私はアイナに強化魔法を掛けた。
「君(グッド)に幸(スピード)あれ」
アイナの体が数秒光る。
「これは・・・・・・」
「サイコン村でバーガーに掛けたものと同じ全能力上昇魔法」
「力が漲りますっ!!」
そのままの勢いでアイナは弓を構える。そして迷いなく射る。
全部で6本。正面に2本、左右に2本ずつだ。横に射った矢もアリスに向かって起動を変える。魔法矢(マジックアロー)だ。
射終わると同時にアイナは武器を細剣に切り替えて走り出す。
「ちょこざいですわね」
アリスは舞うように鉄扇で矢を弾く。
アイナが細剣を突き出す。
「ふっ!」
鉄扇をクロスさせて受ける。金属どうしが衝突する音が響く。火花が散る。
私の番だ。
「再利用念動力(リサイクルキネシス)」
魔力で弾かれた矢を浮かせて再発射する。
アリスは鍔迫り合いをやめて跳躍回避する。
アイナは相手との距離を取ったとたんに弓に切り替えて矢を番え射る。その数5本。
アリスは空中にいながらも体を回転させながら鉄扇で弾く。
アイナが着地地点目掛けてさらに矢を射る。
それすら弾いたアリスは無傷で着地する。
しかし二人のコンビネーションによって発生した僅かな着地の隙をアイナは見逃さない。
「はぁっ!!」
細剣の鋭い突き。鉄扇を弾き飛ばした。
鉄扇はカラカラと地面をスライド。消滅する。
「ふうん。中々のコンビネーションね。勇者パーティが全員揃っていたら危なかったかもしれないわね」
そう言いつつ。鉄扇を魔力生成して補充する。
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