上 下
639 / 1,167
五章『チーズ編』

第639話 大戦争14

しおりを挟む

「カマさん、行きますぞ、鎌鼬」

 聖鎌から魔力生成された風の性質を持つ鼬が飛び出す。と言っても視認しにくい風の魔法だ。魔獣チワワは直進したまま、もろに直撃する。

無傷。

「ヴァルヴァル!!」
「効果なし、旋風」

 今度は設置型の風魔法だ。魔獣チワワの周囲に風の刃が発生する。

「ヴァHAHAHAハハハハーー!!」
「皮膚が変化していますな。今のチワワは岩石よりも硬い外骨格を纏ってますぞ!」

 リトルが前に出た。

「私が行こう、小隊連携だ!」
「おお!!」

 聖騎士を引き連れリトルが先陣を切る。

「おおおお! ビックソード!」

 リトルは小柄な体型にも関わらず大剣を軽々と振るう。ビックソードは重力魔法によって軽くなっている。そういう魔法武器(マジックウェポン)だ。

 リトルは軽業師が行うようなナイフ捌きを大剣で実現させる。あんなもの俺でも受けきれないだろう。手数が足りない。

「ゲヘヘ」
「むっ!?」

 魔獣チワワは文字通り手数を増やした。そう3本目の腕が生えたのだ。否、それどころか後からあとに背中から大量の腕が生えてくるではないか。

 伸びる腕がリトルを捕まえようと執拗に迫る。

「旋風!」

 オショーの魔法援護により魔獣チワワの腕が幾つか切断される。生えたての腕は切断できるようだ。

「挟み込め!」

 尚もリトルは挟撃指示を出す。指示を受けて聖騎士たちが左右に分れ魔獣チワワを槍で突く。背から生えた長い腕でその槍を掴んで止める。そして無造作に振り回す。聖騎士たちが空を舞う。

「槍は掴まれて不利だ。剣を抜け! 魔力を込めて切りつけろ! 少しでもダメージを与えろ!」
「おお!!」

 リトルが魔獣チワワの腕の殆どを相手取っている。そのお陰で聖騎士たちに腕の追撃はほとんどない。

 リトルは正面からやや外れるように立ち回っている。

「ヒマリ! 今だ!」

 リトルが大きく右に飛ぶ。背後にいたヒマリが素早く剣を構える。

「サンライトフラッシュ!」

 双子聖剣サンザフラのサンの方から放たれた熱光線が魔獣チワワを襲う。

 魔獣チワワは顔を顰めている一時的に視力を奪った!

「今だ! 続けえ!!」
「ヴァハハ!!」
「なに!?」

 魔獣チワワが飛んだ。一瞬にして蝙蝠のような皮膜を腕と脇の間に作ってばたつかせて飛んでいる。

「魔獣チワワが視力を取り戻しました。そして制空権を取られました!」
「まだだ! 翼の魔導師から授かった翼を再展開すれば取り戻せる!  それに対空ならオショーさんがいる!」
「おまかせを」

 オショーが聖鎌を大きく振るう。空が唸る。

「対空には少々自信がありますぞ」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~

りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。 ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。 我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。 ――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。 「はい、では平民になります」 虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。

あなたを、守りたかった

かぜかおる
ファンタジー
アンジェリカは公爵家の娘、隣国の第二王子ローランドと結婚して、この国の王妃になる予定である。 今、公爵家では結婚直前の披露パーティーが行われていた。 しかし、婚約者のローランドが迎えにこない! ひとまずパーティー会場に一人で向かうもののそこにいたのは・・・ スカッとザマァではない 4話目の最後らへんで微グロ注意。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

さよなら 大好きな人

小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。 政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。 彼にふさわしい女性になるために努力するほど。 しかし、アーリアのそんな気持ちは、 ある日、第2王子によって踏み躙られることになる…… ※本編は悲恋です。 ※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。 ※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...