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五章『チーズ編』
第626話 開戦
しおりを挟む魔王はすべてを見ているかのごとく、部屋での出来事が終わったタイミングで言葉を続ける。
「そうか、残念だ。まぁ、いつでも来いスー、お前が来なければ、死ななくていい者たちがお前の肥やしになるのだぞ」
スーはブルブルと震えている。だが生まれたての小鹿のように立ち上がり、魔王城の方を睨みつけながら叫んだ。
「ネス! 話を聞いて欲しいの!」
「スー、その話は何度もしただろう。そして結果は平行線だ。もうお前から聞くことなど何も無い」
低く重い言葉にスーは押し黙ってしまった。
「さぁ戦だ。人類よ、刹那の平穏は満喫したか? これから始まるは真の平和へ至る、最後の大殺戮だ」
魔王の言葉が終わる。魔王城が動きを見せた。
象の足のような四肢が伸びて地面に到達する。
その足だけでも山のようだ。クレアが早口で言った。
「あの四肢から無数の魔力反応。魔王軍の本隊が降りてきています」
なるほど落下するのでも、飛ぶでもなく、あのぶっとい足の中を通って安全に陸に降り立つつもりか!
それも4箇所。
「長年戦ってきたゴーレムでーす。効率化も極まってまーす」
「王さま、そろそろ手を」
「そうでーすね、向こうの兵が集まるのを待つつもりはありまーせん」
王さまは息を吸い込む。そして怒号を飛ばした。
「一番槍! クロスケ! 敵を薙ぎ払い目にものを見せてやりなさーい!」
「カカカ!」
城のてっぺんにいた三騎士の一人、クロスケが一直線に飛び出して行った。
「皆の者! クロスケに続きなさーい!」
「おおおおおお!!」
開戦だ!
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