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五章『チーズ編』

第624話 王の声

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 それは日常を破壊するには十分過ぎる質量で現れた。











 空飛ぶ魔王城と聞いていたが、あれはこの王都よりも大きいぞ。どんな原理って魔法で飛んでいるんだろうが、あのゴーレムだけでも世界を滅ぼしそうだ。というかマジでゴーレムなのあれ?

 王さまが髭をなでつけながら言った。

「まだ距離がありまーす。お茶にしましょーう」
「飲んでいる場合ですか?」
「クレア、気持ちは分かりますが余裕を持っていなければこれから始まる戦いにも影響しまーすよ」

 魔王城が十分に近づく頃には昼になっていた。
 停止した魔王城は不気味なほど静寂を保っている。まるで嵐の前の静けさだ。




「人間たちよ」




 驚くほど通る声だ。それでいてうるさいとも思えない。
 聴き入ってしまう声だ。

「魔王の声でーす」
「この声が魔王」

 もっと渋い声かと思った。カリスマ性は十分にある声だ。ベクトルが違うだけでこの澄んだ声も王たる器の者の声なのだろう。

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