上 下
606 / 1,167
五章『チーズ編』

第606話 ロストエイジチーズ

しおりを挟む

 魔王城到着まで6日。夕方。王城。

「最高のものを紹介しまーす」

 王さまに具材の件を話したところ潔く承諾してくれた。

「しかし、それには問題がありまーす」
「なんだ?」

 俺に解決出来ることならいいんだが。

「チーズって知ってますーか?」
「知ってる!」

 即答だ。知っているに決まっている!

「チーズの存在は極秘情報なのによく知ってまーすね」
「ギクリ」

 しまった。ハンバーガーの部分が反応してしまったようだ。

「バーガー様は博識さんなんです!」

 アイナはエッヘンと胸を張った。王さまはそれで納得したようだ。

「博識さんなら知っててもおかしくないでーす」
「それでチーズとはなんですか?」
「アイナに説明してやってくれないか」

 俺の知ってるチーズと違った場合が怖いからな。自然な感じで王さまに説明を擦り付けよう。

「おうふ。チーズは王族が代々守ってきた特別な食材なのでーす」

 なんか大きな話になりそうだ。

「どんな食べ物なんですか? あ、そもそも食べ物ですか?」
「いえあ、ハンバーガーの具材ですから、まぁバーガーはよく食えないものも挟んでいるみたいなので仕方ないでーすね」

 なんかすんません。

「チーズとは母乳を加工した食品でーす」
「ぼ、母乳ですか!?」
「いえあ? どうしたんですーか? アイナ?」
「いえ・・・・・・続けてください」
「ほわい? まぁいいでしょう。チーズ、精確にはロストエイジチーズと言いますが、それは、聖母龍、シングルマザードラゴンの母乳を使ったものでーす。失われた技術を使い作り出されたオーバーでテクノロジーな固形物とも流動体とも言えぬ粘度が極めて高い黄金の食材なのでーす」

 ごくりと唾を飲み込む音がした。もちろんアイナからだ。恥ずかしそうにして顔の温度が上昇しているのを感じる、可愛い。

 そして王さまに説明してもらってよかった。俺のいた世界のチーズとはスケールが違った。

「なんだかよく分かりませんがとにかくおいしそうです!」
「そんな高級品を挟ませてくれるのか」
「もちろんでーす。有事ですし、勇者の力を遺憾無く発揮してもらうためなら喜んで譲りましょーう」
「それは助かる」
「しかし、問題が2つ」

 ここでか、

「なんだ?」
「一つは製法が途絶えてしまったということ、あるものしか渡せませーん。これはどうしようもありませーん。残るもう一つが非常に厄介なハードルなのでーす」
「勿体ぶらないでくれ」
「ソーリー、チーズを守護しているのがロストテクノロジー満載のガーゴイルなのでーす!」
「なるほど、チーズを得るにはガーゴイルと戦わなければならないのか」

 チーズを得るためだ、どんな奴とだって戦ってやる!

「それで場所はどこだ、遠いと困るが」
「この真下でーす」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

あなたを、守りたかった

かぜかおる
ファンタジー
アンジェリカは公爵家の娘、隣国の第二王子ローランドと結婚して、この国の王妃になる予定である。 今、公爵家では結婚直前の披露パーティーが行われていた。 しかし、婚約者のローランドが迎えにこない! ひとまずパーティー会場に一人で向かうもののそこにいたのは・・・ スカッとザマァではない 4話目の最後らへんで微グロ注意。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

さよなら 大好きな人

小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。 政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。 彼にふさわしい女性になるために努力するほど。 しかし、アーリアのそんな気持ちは、 ある日、第2王子によって踏み躙られることになる…… ※本編は悲恋です。 ※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。 ※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...