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四章『トマト編』

第597話 闇のトマト

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「これ個人で栽培してるのか?」

 よく見れば他の部屋もあり、伝説山の地下より大規模なものとなっている。

「あの流通具合から協力者がいると思います」
「クスクス。正解でス、って褒めてあげればいいでスか?」
「結構です」
「今は第5エリア辺りで作業している時間でス。見に行きまス?」
「ああ、ここまで来たんだ、見ておきたい」

 トマト部屋を6部屋ほどすぎた辺りから声が聞こえ始めた。出入口の上に5番と書かれている部屋に入ると人がいた。

 スカリーチェに気づくと慌てて並んで跪いた。
 身なりは清潔そのもの。髪の毛は丸坊主、さらには眉毛まで剃られている。徹底した衛生管理意識だ。

「この人たちは・・・・・・?」
「奴隷っス」
「奴隷だと!? 王国民を攫って奴隷にしているのか?」
「はい、そうでスけど」

 なにか悪いことでもしましたか? みたいな顔をしている。

「あのな、こんなの犯罪だぞ」
「窃盗」
「え? なに?」
「強盗、闇取引、人身売買、麻薬密売、婦女暴行、快楽殺人、詐欺、放火、地上げ、あー、指が足りないっスね」

 スカリーチェは張り付いた笑み向ける。

「色々呼び方はあれど、カテゴライズするなら彼らは犯罪者でス」
「だからって、こんなこと」
「おやおやおや、アイナでしたっけ? いま悩みましたね? 言いよどみましたね? 彼らは守るべき人類、人間ではないんでスか?」
「そうです!  だから悪いことをしたのなら法によって裁かれるべきです!」
「大義名分を得ようとして法を口に出さないでください。誰かが悪いと言ったからなんて理由、つまらなすぎてあくびがでるっスよ」
「でも」
「いいんでスよ。彼らは一生懸命働いてトマトを作っている、それも地上の人間とは比べられないほど必死に働いて、じゃなければあれだけ流通するわけないじゃないですか」
「更生施設みたいなものか」

 俺が独りごちるとスカリーチェはクスクス笑った。

「無期懲役でスけどね、地上に出てゲロられても困りまス」

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