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四章『トマト編』

第550話 礼儀杯13

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「え」

 今の声は?

「どうした? 止まりやがって」

皆には聞こえていない? 確かに耳元で囁かれたように鮮明に聞こえました。幻聴なんかじゃありません。

「臆したか、最後の最後で。しゃあねぇよくある事だ」

 クロスケ様が黄金大剣を振り下ろします。回避不可の一撃を私にーー

「なに!」

 クロスケ様と私の間に見たことの無い盾が出現しました。元からそこにあったかのように空間で停止している盾は黄金大剣を微動だにせず受け止めます。

「こいつは・・・・・・そういうことでいいンだよな」

 私がぼんやりしているとクロスケ様は何か納得したように距離を取ります。

「王さまよぉ。こいつ適合者だわ」
「それマ?」
「マジだよ。じゃあ仕切り直しだ」

 クロスケ様は黄金大剣を両手で握り直します。

「行くぜ。この一撃で終わりとしようや」
「はい」

 何がなんなのか分からないまま返事をします。

『私ハマナーノ盾。マスターノ守護ノ心ニ応エ馳セ参ジマシタ』

 声の主は眼前に浮く盾からだ。

「貴方がマナーの盾?」
『ハイ。マスターヲ待ッテイマシタ』
「私を?」
『サーマスター。今コソ守リ抜ク時。私ヲ手ニ取リソノ覚悟ヲ再度示シテクダサイ』

 私はマナーの盾を掴みます。思ったよりも軽い盾は私の手にフィットします。それを待っていたかのように盾は重さを取り戻しました。

「準備できたか?」
「クロスケ様」
「なんだ?」
「本当にお優しいんですね」
「またかよ。調子狂うぜ」

 これから来るのは三騎士の一撃。
 私は耐えなければならない。

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