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四章『トマト編』

第530話 魔王城の平凡な日常12

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「待つポメ!」

 2回も言いやがった。そしてこの安直な語尾は。まさか。

「ポラニアか」
「そう言う君はギアポメね」

 そこにいるのは確かにポラニアだ。杖をついているがふてぶてしい分厚い眼鏡は健在だ。

「もう大丈夫なのか?」
「大丈夫ポメ。ちょっと頭がかけておかしくなっただけポメ」
「なんだ、それならいつも通りじゃねぇか」
「違いないポメ」

 俺たちはシチューに向き直る。九大天王が囲む形になってるが脅威は未だ変わらずだ。

「それでこのタイミングで来たってことはなんとかできるんだろうな」
「もちろんポメ。見てるポメ」

 ポラニアは杖をつきながらシチューに近づいていく。

「危ないですよ!」
「止めるんじゃねぇ」
「だって、あまりにも危険ですよ」
「策なしで行くようなやつじゃねぇだろ」

 俺がレイと話している間にポラニアがシチューの前に立つ。シチューの表情は相変わらず読めねぇ。

「シチュー様。どうか怒りをお納めくださいポメ。僕と一緒にラボに帰りましょうポメ」

 ポラニアは杖を離してその短い腕を広げる。
 シチューは二足歩行になると困惑した顔をしながらもポラニアとハグをする。

「もう大丈夫ですポメ。僕がいますポメ。おいしいご飯もたくさん用意しますポメ。遊びも。生贄も。僕の捧げられるものなら全部ぜーんぶ捧げますポメ」

 シチューはキョトンとしていたがポラニアの言葉を聞いた途端、眉間にシワを寄せて目をぐぐぐと細ませる。口を8の字を横にしたような形に歪ませてから涙をこぼす。

「~~~~!!」

 それは声にならない嗚咽だった。どういう理由かは分からねぇ。だがポラニアが優しくその背中を撫でるとポラニアは破顔した顔の穴という穴から体液を垂れ流す。それはさながら工業排水を垂れ流すような光景だった。

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