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四章『トマト編』

第521話 魔王城の平凡な日常3

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 会議が終わってとっととラボに戻ろうと帰路を急いでいた俺はいつからいたのか背後からブラギリオンに呼び止められた。

「ギア氏」
「なんだよ」
「また仕事でござるか?」
「ああ」
「たまにはのんびりしたらどうでござるか?」
「あん? どうしてだ」
「まだ王国に着くまでに余裕があるでござろう」
「無(ね)ぇ。余計なお世話だ」

話しているうちに庭に出る。かなり大きな庭だ。レイがいた。

「あ、ギアにブラギリオン様」
「こんなところで何をしている」
「え? 休憩中ですよ」
「もうそんな時間か」
「はい、結構話されていたみたいで」
「会議の内容はこの紙に書いてーー」
「今は休憩中です。ギアもこっち来てください」
「ち、分かった」

 ブラギリオンは俺たちのやり取りを見て笑うとジョウロに水を入れ始める。

「この庭、ロゴリ・・・・・・メアリー氏が手入れしているんでござるよ」
「へぇ」
「ギア。仕事以外の会話に興味がなさすぎですよ」

 レイは「今更ですが」と余計な言葉を付け加えた。

「魔王城にふさわしい庭だとは思わないでござるか?」
「庭ねぇ、どの花も草も木も俺には全部一緒に見えるな」
「それは問題でござるな。もし勇者が草木に詳しかったら?」
「詳しかったらなんだよ」
「その分ギアは勇者に負けているということになるでござるな」
「おいレイ植物図鑑寄越せ」
「そんなのいま持ってるわけないじゃないですか」

 そういうとレイは紙袋からフルーツサンドを取り出して食べ始める。

「ちぃ」
「ござっふっふっふ」

 ブラギリオンが不敵な笑い声をあげる。

「あ(な)んだよ」
「そこにいる彼女に聞いてみたらどうでござるか?」
「あーん?」

 ブラギリオンの指さす方向に首を傾けると、柱の影からこっちを見ているメアがいた。

「なにしてんだ」
「こっちのセリフよ! なんで貴方がここにいるのよ!」
「流れだ。こっち来い」
「は!? なんでよ!」
「嫌ならいい」
「いいわ! 行ってあげるわ!」
「嫌ならいいって言ってんだろうが」
「なによ! 来てあげたのに礼も言えないの!」
「ありがとう」
「くっ! 変なところが素直なのよ貴方!」
「大声が鬱陶しいぞ、トーンを下げろバカヤロウ」

 メアはわざわざ俺の隣に座る。まぁどこでもいい。

「植物について教えろ」
「嫌よ!」
「ならいい」
「あれが今一番見頃の花よ」
「おい、なんで必ずワンクッション拒否を入れるんだ? 時間の無駄だろ」
「私は貴方の道具じゃないからよ」
「意思表示ってわけか」

 それだと効率が悪い。

「俺に植物のことを教えてください。これでいいか?」
「いいわ! 特別に教えてあげるわ!」

 たく、めんどくせぇやつ。

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