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四章『トマト編』

第421話 修行12

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「アイナさん、アイナさん?」
「は、はい!」

 授業中にトレース先生に呼ばれたアイナは慌てて立ち上がる。

「ここのページを読んでください」
「はい!」

 俺は魔力さえあれば活動できる、夜になると眠くなるが割と平気だ。

 だがアイナは生身だ。朝練にしてはハードすぎた。
 前日もヘトヘトを越えてしごかれたからな。

 正しく修行なわけだが、当然眠くなる。

 それでもアイナは頑張っている。
 アイナは頑張り屋さんだからな。何か労ってやりたいところだ。

 休み時間になると同級生たちに囲まれる。もちろん話題は修行の事だ。

 「あの猫さんだれ?」「いじめられてるの?」「すごい強かったね!」「今日も朝やってたよね!」

 質問攻めだ。それもそうだ、この子らは知らないんだ修行の厳しさを・・・・・・知らなくていいけどな。

「いじめられてないですよ、あれは修行の一環で、あの人はクロスケさんといってーー」

 アイナは嫌な顔せずに質問を返していく。
 実際嫌じゃないんだろうな。アイナは人が好きなんだ。
 正義感も人一倍強い。

 そうこうして昼休みになる。
 もちろん俺たちは食堂に向かう。食堂の料理にハマったっていう設定だ。

「アイナ、好きなだけ食っていいぞ」
「ですが、お金が」
「気にするな、それに今は修行期間だから、しっかり食うのも修行の一環だろ?」
「そうですよね! お言葉に甘えさせていただきます!」

 速攻で折れたな。素直でよろしい。

 アイナは10人分の料理を注文する。
 そしてテーブル1つを占領して暴食を始める。

 この学校は全てが大規模だ。食堂もやけに広い。テーブル1つ占領したところで迷惑にはならないだろう。

 アイナはナイフとフォークを使って上品に食べる。

 しかし毎度の事ながらよく入るな。アイナは華奢な体をしている。どこに収納しているというのだ?

 女性の神秘だな。

「バーガー様、見られていると食べにくいです」
「あ、ああ、すまん」

 そして俺の視線にもよく気づく。

 周りの人たちもたくさん食べるアイナを変な目で見たりはしない。多種多様な人種が通っているこの学校だ。大食いキャラも沢山いるのだろう。

 と、俺はこちらに向かってくる人物を見てギョッとする。

「カカカ。よく食うじゃねぇか?」
「く、クロスケさん!?」

 そう、現れたのはクロスケだ。

「そう身構えンなよ、俺だって飯くらい食うぞ」

 俺たちの横にどかりと座ると、背後から現れた聖騎士たちが料理を持ってくる。

「俺ぁ硬っ苦しいのは嫌いだがこういう待遇だけは好きだな。カカカ」

 アイナがクロスケの料理を見て涎を垂らす。

「そのお肉なんですか?」
「小龍(ワイバーン)の肉だ。食うか?」
「食べます!」
「結構大物だ。俺も半分くらい食ったンだがまだまだあるぜ。おい!  てめぇらここにいる奴らにも振舞ってやれ」

 聖騎士たちは一礼すると去っていった。これが仕事なんだろうが、可哀想だな。

「なんだその面は、気にするこたァねェ。あいつらには小龍(ワイバーン)の希少部位を譲ってやった。俺からのボーナスだ。カカカ」

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