418 / 1,167
四章『トマト編』
第418話 修行9
しおりを挟む「お前は魔力操作が下手じゃなくて、できねぇみたいだな。挟んだもンから魔力を吸収できるとかいう特異体質のせいか?」
「スゥーー。なんとか、ハァーー。スゥーーできないのか、ハァーー」
「こればっかりはな、伸びしろが全くねぇ。才能がないとかそういうレベルじゃねぇ。不可能だ」
・・・・・・ここまで断言されると落ち込みようがない。
俺も魔力を操作して自力で魔法を使いたかったなぁ。
「だが、ほらお前は挟んだ物の魔法を使えるんだろ? 試してみたらどうだ?」
「スゥーー。空気をか?ハァーー。」
「物は試しだ」
俺は意識を内部に集中する。大きく空気を吸い込んで解析開始だ。
・・・・・・。なんの反応もないな。
動物の肉や雑草を挟んだ時も何も検出できなかったし。それと同じことなんだろう。
俺が考えているとクロスケが覗き込んできた。
「どうだ?」
「スゥーー。ダメだ、ハァーー。スゥーー。何もない、ハァーー。」
「そうか。じゃ、そのまま瞑想を続けていろ」
そうこうして3日が経過した。
アイナはこの3日間、ほとんど寝ずに俺と共に修行してくれた。飯も最低限だし、よく腹を鳴らして赤面していた。
「砂時計の砂が落ちきったな。一旦帰っていいぞ」
「・・・・・・はい」
クロスケは全く疲れを見せなかったな。それどころか、アイナが飯に行く間や仮眠を取っている間も俺の前から離れなかった。
俺はゲームにハマって15徹したこともあるから、このていど平気だったが、このクロスケも相当にやるようだ。
「お前眠くないのか?」
「スゥーー。眠いが、ハァーー。スゥーー。我慢できる、ハァーー。」
「そうか。クソも飯も要らねぇとなると案外そのパンの体も悪くねぇのかもな」
「スゥーー。それはない、ハァーー。」
「カカカ。じゃ、また明日な」
クロスケは跳躍して去っていった。
ん? まて、明日と言ったか?
「バーガー様・・・・・・これを」
アイナは力なく俺に薬草を挟んでくれた。
「今日は宿でゆっくり休もう。明日また何かやるようだしな」
「はい・・・・・・とてつもなくお腹がすいてます、それに眠いです」
足取り重く宿につくと、クロスケに蹴り壊された窓が見えてきた。
乱雑に板が打ち付けられている。荒っぽい仕事だ。
宿の主人も保証金をたんまり貰ったらしく、特に文句はないと言ってくれた。
ドアがあった場所を通り、部屋に入る。
スーが餓死していた。
「おい、何やってんだよ」
「・・・・・・一文無しなの」
「え? あれだけあったお金は? 王さまからもらったやつ」
「ぜんぶ使っちゃったの」
おいおいマジかよ・・・・・・。
「バーガー様。宿屋の主人に料理を注文してきます」
「あいよ。たらふく食えよ。2人とも」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生令嬢の幸福論
はなッぱち
ファンタジー
冒険者から英雄へ出世した婚約者に婚約破棄された商家の令嬢アリシアは、一途な想いを胸に人知の及ばぬ力を使い、自身を婚約破棄に追い込んだ女に転生を果たす。
復讐と執念が世界を救うかもしれない物語。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる