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四章『トマト編』

第410話 修行1

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 俺たちを学校にある訓練場に移動した。

 クロスケが足で地面を数回ならして、よし、と一言。

「ここで修行するのか?」

 学校でするとは聞いていたが、修行ともなれば、魔法とか危険な訓練とか色々するはずだ。朝になれば学生たちで溢れかえる王さまが言ったとはいえ学校でわざわざやらなくてもいいんじゃないんだろうか?

「考えてもみろ。俺たち聖騎士やお前みたいな勇者はよ。修行の成果は人前で見せるものなンだよ。なら人前で修行するのもありだろ?」

 妙な説得力だ。

 確かに戦闘時は周りで何が起こるか予測できない。
 クロスケの言うように都合のいい場所で戦えるなんてことはまずない、それはこの世界ですでに学んでいる。

「わかった。ここでやろう」
「潔いいな。もっと抵抗しろよ。じゃ手始めに」

 クロスケはポケットから何か取り出す。砂時計だ。

「お前、バーガーだっけ?」
「ああ、俺はバーガー・グリルガードだ」
「そうか。バーガー。まずそのエルフの、名前なんだ?」
「アイナ・フォルシウスです!」
「そのアイナ・フフフフフンから降りろ」

 誤魔化すな!

「・・・・・・わかった」

 俺はクロスケに言われた通りに床に降りる。
 クロスケが俺の前に砂時計を逆さにしておく。砂が下に落ち始める。・・・・・・とてつもなく遅いぞ。一粒ずつ間を開けてゆっくりと落ちている。

「その砂時計の砂が完全に落ち切るまでの3日間、そこから動くな」
「は?!」

 待て待て待て待て!
 修行だよ? 俺も生前は座禅とか瞑想を嗜んだが、それは後半になってからの話であって。今は体を動かした方がいいんじゃないのか?

「動くなッつッてンだろ!!」

 クロスケが小石を俺に向けて指で弾いた。小石は俺の横に銃弾のような速さで地面に着弾する。煙が上がっている。俺は生唾を飲み込む。いや唾とかないんだけどさ。

「バーガー様!」

 アイナは慌てて俺に駆け寄ろうとする。
 クロスケはギラリと笑う。

「アイナ危ない!」
「え、ぐっ!」

 アイナがクロスケの蹴りを喰らい、ふわりと宙に浮く。

「お前は俺の相手をしてもらう」
「やめろ! こんなの修行じゃない!」
「お前に修行の何がわかんだ? ええ?」
「それは・・・・・・勘だ!」
「勘か。どっちにしても、これが嫌なら俺は降りるだけだな」
「な・・・・・・」

 王国最強の一角であるクロスケに稽古をつけてもらう。
 これはまたとないチャンスだ。・・・・・・だがアイナがやられているのを俺は黙って見ていられない。

「ああ、わかった! やめてくーー」
「バーガー様!!」
「アイナ?」

 アイナは苦しそうにしているが自分の足で立ち上がっている。

「修行を続けましょう!」
「だか、アイナが」
「私は大丈夫です! 必ず強くなります!」

 アイナのこの目は絶対に譲らない時の目だ。

「・・・・・・ああ、わかった。俺はここを1ミリも動かない」

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